コロナショックで意外にも自殺者は減少しました。この原因は何でしょうか?

警察庁がウェブサイトで公開した2020年4月の自殺者数は1455人で、2019年4月の1814人から19.8%減。同庁などによるまとめによると、少なくとも2015年以降、4月の自殺者数としては最も少なかった。

4月は新型コロナウイルス感染拡大による一斉休校や在宅勤務が広く行われていただけに、Twitterでは「職場と学校には20%も自殺に追い込む何かがあるってこと」という声も多数上がっている。

4月の自殺者数が前年比で約2割減 「職場や学校に追い込む何かが…」という声も 2020年05月13日 12時51分 JST ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ebb58afc5b6ae915a8be073

記事では「学校や職場でのストレスが減って自殺者が減った」とありました。

もちろんそれもあります。

しかし意外かもしれませんが、本質的な理由は「高齢者の自殺の減少」です。


自殺者の多くは高齢者

自殺者は、若い人や現役で働いている人の自殺が注目されがちですが、自殺者のグラフをよく見てみましょう。

表7 年齢階級別、職業別自殺者数

平成30年中における自殺の状況 平成31年3月28日 厚生労働省社会・援護局総務課 自殺対策推進室警察庁 生活安全局生活安全企画課
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H30/H30_jisatunojoukyou.pdf

一見、60代<40代<50代の順で自殺率が高くなっているので「40代や50代の人の自殺率が高い」と見えます。
特に、被雇用者(現役労働者)は40代<50代で最も自殺率が高いので「職場のストレス」で亡くなられている方が多いです。

実際に厚労省「国民生活基礎調査の概況」のアンケートでも以下の結果が出ています。

●仕事の悩みの大半
1位:「自分の仕事、職場の人間関係」
2位:「収入・家計・借金」
3位:「子供の教育」(30代・40代女性)

20歳頃まで:「受験・進学」
65歳頃から:「自分の健康」

しかしグラフをよく見てください。

・無職
・年金・雇用保険生活者

が内訳の中では潜在的に多いのです。

「無職」の50代<60代<70代と増加傾向。
「年金・雇用保険生活者」(年金生活する人)が60代<80代<70代と増加傾向です。

現役労働者の自殺者の約1500人に対して、
無職の年金生活者(高齢者)は約2000人の自殺者がいます。

高齢者自殺が最も多いと呼ばれるのはこれが理由です。

なぜコロナショックで自殺者が減ったのか?

まとめると

・自殺者は40代・50代・60代以上。
・高齢者で無職や年金受給者の自殺者が一番多い。

・被雇用者(働いてる人)が次に多い。

定年退職でも解雇でも高年代で失業すると自殺者は多くなり、現役で働いてる人は収入より人間関係で自殺しています。

なので2020年4月の自殺者数20%減のニュースを「今まで現役労働者が死んでいた」というのはミスリーディングになります。

ずっと自殺者の多数派は高齢者なのです。

もちろん現役労働者の自殺も減ったでしょう。

しかしそれは

「自粛により高齢者と家族が一緒にいる見守り環境ができたので相互に自殺者が減った」と考えられます。


「誰かがいる」という環境が大切

例えば、かつて自殺の名所と言われた東尋坊(とうじんぼう)では2016年にポケモンGOが流行ってからポケモンの名所になりました。

「常に誰かがいる」という状態になったので自殺者が減ったのです。

緊急事態宣言で実家に戻ったりして家族など誰かが側にいる状況になったから、孤立感や自殺企図を起こしにくくなったのです。

ヒトは自分から自発的に「孤独」にはなっても良いですが、客観的に集団から「孤立」してはならない生き物です。

孤立するとアノミー(無連帯)という状態になり、自殺する傾向が出てきてしまいます。

自殺者数が増え出したのは最大の要因は消費税の増税により景気が悪化しはじめた1998年。
これに加えて家族が「サザエさん型」から「クレヨンしんちゃん型」の核家族化を推し進めたことが理由にあります。
昭和時代は「都会への丁稚奉公(でっちぼうこう)」「家を捨てて親元から離れて都会へ行くなんて親不孝者」と言われたくらいだったのに、
高度経済成長時代を得て、いつのまにか「個人で自立/独立することが良い」とされました。
これは冷蔵庫やエアコンや洗濯機など今まで一家に一台だった家電を更に消費させるため、家族を分断させて個人へ一台へと向かわせる家電企業のマーケティングが背景にありました。

どんどん都市部で出稼ぎさせ、家族を分断して孤立させていったのです。

(前記事)
日本人の「勤勉さや時間を守る姿勢」「親の実家からの自立」の習慣の歴史が浅すぎる件

また孤立に戻してはならない

今回のリーマンショックの30倍のコロナショックで多くの企業が倒産・破綻しました。
働く場所を失った人たちが溢れました。

都会が大空襲で焼けたので、田舎にコロナ疎開と称して逃げた来たのです。

また都会に戻してはいけません。

日本人の場合、旧約聖書のソドムとゴモラのロトの家族みたいになってしまいます。

大炎上した街からロキ家族は脱出できたのに、妻がまた戻ろうとして死んでしまうのです。

せっかく在宅ワークで効率化できたのに、またオフィスワークという爆心地に戻ることを強要されて爆死するように気をつけたいですね。