コロナ治療薬の宗教化が現実になってきました。

治療薬が増えること自体は、選択肢が増えるので良いことです。

しかし問題は、治療薬の効果の是非で人事まで左右されてしまうことです。

この結果は、必ず「第二のディオバン事件」を生むでしょう。


政治で科学の結果が変わってしまう

厚生労働省は31日、医系技官トップの鈴木康裕医務技監が退任し、後任に福島靖正国立保健医療科学院長を充てる人事を発表した。新型コロナウイルスへの対応に当たるさなか、治療薬や検査体制への対応などで中心的存在を担ってきた鈴木氏の交代には、治療薬候補「アビガン」の承認などをめぐる首相官邸側の不満が背景にあるとの見方がくすぶる。
(中略)
 アビガンをめぐっては、安倍晋三首相が当初、「5月中の承認を目指したい」と表明。しかし、企業治験や臨床研究で有効性が確認されない中、鈴木氏は「あくまで科学的に判断すべきだ」として、早期承認に一貫して慎重姿勢を示してきた。厚労省には薬害をめぐり強い批判にさらされた過去があり、こうした苦い経験を踏まえたものだ。

コロナ下、医官トップ交代 官邸の不満、背景との見方も―厚労省 2020年07月31日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020073101039&g=pol

この問題はアビガンの効果云々は関係ありません。

科学の研究の効果以前に、「政治的な主導によって結果を決める」という権威的なパターナリズム(父性主義)が背景にあることが大問題です。

官邸不満が発端で厚労省のトップ医務技監が退任された件を受けて、

一気にコロナ研究業界が萎縮しました。

「アメリカ発の治療薬はすべて効果あり」と言う研究結果を出さなければならない論調なのです。

(※1)

最初から結論ありきの官製の科学研究。

このパターンは今後、ディオバン事件と同じことがまた起こることは明白です。

ディオバン事件とは?

2007年から起こった高血圧治療薬ディオバン(バルサルタン)に関する効果論文を、利益相反する製薬会社(ノバルティスファーマ)社員と複数大学が関わってデータ改ざんした事件です。

最初から「薬効あり」が前提として、データを捏造していったことで問題になりました。

これと同じことが対コロナの治療薬でも起こるでしょう。


効果なしと書けば今叩かれ、効果がありと書けば後で叩かれる

研究論文で「効果あり」と書けば今(2020年現在)はもてはやされますが、後々に必ず副作用の可能性云々で研究業界から叩かれるでしょう。

ディオバン事件と同様に製薬会社の問題が露呈すれば支持していた論文も研究業界から叩かれること必須です。

逆に、「効果なし」「懐疑的」と書けば今(2020年現在)は権威サイドから叩かれるでしょう。

どちらに転んでも地雷なのです。

まるで幕末に幕府から武士というこれから終了するコンテンツの権威だけ与えられ、無自覚に利用されて、時代が明治政府に変わったら捨てられた新撰組のようです。

アビガンは効果なしで終わったのか?

2020年7月、アビガンは藤田保健衛生大学病院の研究で効果が疑わしいとされて失望を生みました。
藤田保健衛生大学病院は2020年に国内で船内感染したダイヤモンド・プリンセス号の上客を受け入れたことで、日本の感染病院の先端にいただけに失望が大きかったです。

藤田医科大学は10日、新型コロナウイルス感染症患者に抗インフルエンザ薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)を投与する特定臨床研究の結果、主要評価項目のウイルス消失率に統計的有意差はなかったとする最終報告を発表した。新型コロナウイルス感染症への効果が大きな注目を集めていたアビガンだが、多施設ランダム化臨床試験の結果、明らかな有効性は認められなかった。今後の焦点は、富士フイルム富山化学が実施中の第III相試験に移りそうだ。

【藤田医科大学】アビガンの有効性認めず‐ウイルス消失に有意差なく2020年07月13日 (月) 薬事新聞
https://www.yakuji.co.jp/entry80228.html

しかし一方で、これは暫定的な結果で200人以上のサンプル数ならまた結果が変わってきたかもという可能性も残しています。

 新型コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス薬「アビガン」(ファビピラビル)の臨床研究を行っている藤田医科大学は、2020年7月10日、有効性に関して統計的有意差は見いだせなかったとの暫定的な結果を発表した。ただしサンプルサイズを拡大すれば有意差が得られる水準であったことを踏まえ、研究責任医師の同大学医学部感染症科の土井洋平教授は「ファビピラビルは有効である可能性がある」と評価した。

アビガン臨床研究で結果、有意差無しも「有効な可能性」 藤田医科大学が発表、200人対象なら検出力満たしたか 日経バイオテク
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/07/10/07183/

まだ途中報告であって効果がないと決まったわけではありません。


しかし消えていくアビガン

もとよりアビガンは開発は日本ですが、ライセンスの株主が中国の製薬会社です。半分はアメリカのファイザー製薬(アメリカ製薬会社1位)なのです。

このような日中米の共同開発の薬でしたが、米中対立から、アメリカのギリアド社やファイザー製薬は独自に製薬会社を作り始めました。
アメリカがコロナ市場の利益を独占したいので、中国人事で決められているWHOからも脱退して、独自に動き出しました。

このアメリカの行動に日本も追従しているのです。
だからアビガンは日本では非推奨されて、アメリカの製薬会社の薬を信仰しなければならないという未来が想定できるのです。

(※1)
感染症の治療薬の今後~アビガンからレムデシビルへ~

なぜレムデシビルは「アメリカで効果あり、中国で効果なし」なのか?

レムデシビル教という新興宗教が生まれるだろう

コロナの治療薬市場は、発生時が同時に始まっています。
この場合、最後に勝つのは最初から力のあった会社です。
比較的小さな企業や小さなベンチャー企業がいかに優れた薬を開発したところで、市場規模を独占できるほどの生産力と供給力がないといけません。

単純な出来高でコロナ治療薬市場は決着するでしょう。

だから市場規模を見ると、レムデシビルを出しているアメリカのギリアド社(2位)か、出遅れながらも開発しているアメリカのファイザー製薬(1位)の治療薬に決まっているのです。

問題はそれを科学的根拠関係なく、宗教的に「効果がある」と信奉しなくてはいけない未来です。

レムデシビル教というコロナ治療の宗教ができる