いじめ・パワハラも多様化しています。総務省の「情報通信白書」によるとSNS利用者の約15%がSNSでを経験しています。

同じ職場や学校で、いじめ対象者のインターネット上のSNSアカウントを勝手に探し出して特定し、いじめっ子の仲間内で誹謗中傷嘲笑にしたり、学校の先生や職場の上司に報告して、その人の尊厳を貶める卑しい人もいます。

やってる本人はいじめたい相手のSNSを特定して晒して「してやったり」と悦に浸っているかもしれませんが、実は逆です。特定して晒した人こそ、とんでもない犯罪を犯しています。

私自身も過去にたくさん相談されたり、実際に被害を受けたこともあって、弁護士に詳しく聞いて警察に通報したこともありました。

よく「特定班」を気取って特定する彼・彼女らは一言で言えば「ストーカー」です。

では、どんな犯罪となるのか?

またそんな彼・彼女らをどう通報すればいいのでしょうか?


ネットストーカー(サイバーストーカー)とは?

まず基本的にネットストーカー(サイバーストーカー)について知っておきましょう。

通常のストーカーとは、

・つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・見張り/監視していると告げる行為
・面会・交際の要求/粗野・乱暴な言動
・無言電話、連続した電話・ファクシミリ/汚物などの送付
・名誉を傷つける/送性的羞恥心の侵害

これらの「つきまとい」の行為を複数回行うことです。

平成29年1月3日に改正ストーカー規制法が施行され、SNSによるストーカー行為も含まれました。

恋愛・好意・怨恨の情の充足目的があり、かつ、同法第2条1項各号に掲げる行為がある場合
・つきまとい行為(1号)
・監視していることを告げる(2号)
・交際面会の要求(3号)
・危害を加える言動(4号)
・しつこい電話やメール送信(5号)
・名誉を害すること(7号)
・性的羞恥心を害すること(8号)

「拒否しているのにSNSでメッセージを連続送信する行為」
「ブログに執拗な書き込みをする行為」
「検索エンジンで根こそぎ探し出して誹謗中傷を書き回る」
「スパムの大量送信」
「個人情報の暴露。勤務先や学校への報告。」
「性的嗜好などの個人の秘密事項に当たる事柄を集積・暴露する」

これらのことするのをネットストーカー(サイバーストーカー)と言います。

罰則として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」になります。

なので第三者でもないにも関わらず、関係者が書き込みや写真から勝手に特定して、勤務先や学校へ報告した場合も、同法の罪にあたるのです。

第三者から見て特定不能であれば良い。しかしわざわざ特定したら特定した人がアウト。

基本的にネット上では「第三者から見て特定不能」であれば情報は書き込んで大丈夫です。

「第三者から」というのは、関係者以外(特定しうる人物以外)です。

つまり、
学校のことをネットに書き込めば学校とは全く関係ない人。学校関係者以外。
職場のことをネットに書き込めば職場とは全く関係ない人。職場関係者以外。

その人が特定できなければ問題ありません。

第三者でも特定できる悪事例(書いた人がアウト)

分かりやすく第三者でも特定できる悪い事例を見てみましょう。

「山市証券本部の庶務課の上司の鈴木一郎は何もできない無能なやつだ。」と書いたら特定されます。

書いた側がアウトです。

これを職場の上司が監視していて「個人情報の流出だ!」「名誉毀損だ!」と言えば真っ当な意見です。

名誉毀損罪、肖像権侵害、侮辱罪、プライバシーの侵害、個人情報の保護違反などになります。
内容がウソであれば業務妨害罪や信用毀損罪になります。

第三者でも特定できない事例(書き込んでもセーフ)

では第三者でも特定できない事例とは?
セーフな事例とはなんでしょうか?

例えば、職場で「上司が腹が立つ」と悪口を書き込んでも大丈夫です。

どこの会社の、どこの上司の、どんな名前のまで分かりません。

関係者以外が見ても分かりません。

書き込みが特定不能でセーフなのに特定して広めたら、特定した人がアウト

しかし「上司が腹が立つ」という書き込みを監視して、上司が「俺の悪口書きやがって!」と言ってきたら上司はアウトです。

またSNSで職場の同僚が「~さんがネットで悪口書き込んでた!」と職場で広めたら「特定して広めた人がアウト」です。

なぜかというと、関係者がネットで行動を監視しているからです。ストーカーと同じ行為です。

「第三者から」ではなく、関係者が、特定不能な情報を特定してしまっているのです。

加えて書き込んだ人へプライバシーの侵害、現実で特定して職場で広めたことでの名誉毀損までしています。

想像してみてください。
あなたの家を盗撮しているストーカーがいたとします。そのストーカーが職場であなたの盗撮した写真をバラまきました。
翌日、上司があなたに「家でこんなにグータラしやがって!」と叱責したとします。
おかしな話です。
明らかに最初に盗撮して特定して個人情報をバラまいたストーカーの犯人が悪いのです。
あなたは何も悪くありません。

問題のない書き込みを職場や学校の上司や同僚を監視して報告したとしたら、実はこれもソーシャルメディア・ハラスメント(Social Media Harrassment:略してソーハラ)と呼ばれる他人のSNSを監視するパワーハラスメントの行為になります。
会社の上司が「Facebookで友人申請を受けろ!」と強要することもそうです。

パワーハラスメントの一種のソーシャルハラスメント(ソーハラ)に当たるのです。

これはTwitter、Facebook、YouTube、Instagram、書き込みだろうと画像だろうと動画だろうと同じです。

わざわざ特定して画像や動画を職場で広めたり、上司に報告してその人を貶めて不利になるよう働いた場合、広めた人のことを訴えることができます。

名誉毀損とプライバシーの侵害罪です。


被害者と加害者が必ずいる

あなたが被害を受けたということは、加害した誰かがいるということです。

書き込みに対して、誰が誰に対して被害を受けたのかをはっきりとさせないといけません。

ネットでありがちな特定班のパターンを考えてみましょう。

例えば、あなたがふと街の風景を撮ったとしてそれをSNSに投稿したとします。
第三者がその中に芸能人が写り込んでいることを見つけて特定して「勝手に芸能人撮った!肖像権の侵害だ!」とあなたに言ってきたとします。
しかしあなたは風景を撮っただけで悪意はありません。芸能人とも知らず、分からずです。
芸能人本人から注意されたなら被害者と加害者がはっきりします。

しかし、そうではないので、芸能人本人から言われるまで応じる必要はありません。
この場合、それどころか、芸能人を特定してあなたに注意してきた人の方が、むしろ芸能人にもあなたにもストーカーと同じことをしているのです。更にそのストーカーが情報を拡散したら、そのことのほうが罪に問われます。

どこに連絡すればいいの?

警視庁では警視庁総合相談センターに相談してみると良いです。(リンク先の下の方に連絡先があります)

警視庁:ストーカー規制法:警視庁総合相談センター

法的なことを知りたければ法テラスに相談してみることをおすすめします。(リンク先の下の方に連絡先があります)

法テラス:ストーカー相談

ネットストーカーでお悩みの方、学校や職場で第三者が見ても特定不能なSNS情報を関係者に特定されて貶められた方は、一報してもいいかと思います。

ネットリテラシーと情報モラルを使い分けよう

職場や学校の悪口の書き込みを監視することもまた犯罪である件~個人情報保護とパワハラ・ソーハラ~