私は教育学部系譜の教育従事者かつ、医学部系譜の医療従事者です。
双方を学んだ上で、医学について書きます。
リベラルアーツおさらい
リベラルアーツではリベラルアーツは神学・法学・医学を上級学部として、
その準備過程に哲学、下級学科に文法、修辞学、論理学、算術、幾何学、音楽をおきます。
このうち今回はリベラルアーツの「医学」を書きます。
神学(数学)という矛盾なき論理学がスッと一本あって、矛盾なき論理学の最高峰である法学、そして人を治す医学。
それと人間をつなぐ哲学を中心として、下位学問に、学問(=理科=自然科学・社会科学)がそれから流れ出たもの(Science=si 神から流れ出たもの=essenceの語源)として出来ている・・
というのがリベラルアーツの学問体系の基礎イメージとしてもっておくと入りやすいです。
なぜ医学はリベラルアーツの上級学部にあるか?
日本では医学は理科系(自然科学)の最高峰であるという価値観があるように感じます。
正確に国際基準学問体系であるリベラルアーツでの「医学」を理解しておかなけばなりません。
そもそもなぜ医学?
と感じるでしょう。
これは医学が「神の奇跡」と考えられていたからです。
正確には「治癒」「治ること」は「神の奇跡」だと考えられていたためです。
リベラルアーツにおいて神学・法学に次いで権威的な立場があるのもこれがためです。
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教では、予定説と言って、神様は宇宙の誕生も全人類の生死もすべてのことを必然として予定していると考えられます。
だから神学(数学)で「すでに答えが出ている」ことを人間が「証明」「解答」しなくてはならないのです。
「治癒」も「奇跡」も同じです。なので研究しなくてはいけません。
「治癒」という「神様の奇跡」も研究しなくてはならないのです。
「医学」とは「メディチ家」のこと
医学(医療)はmedicine(メディスン)と訳します。
Medicine(メディスン)の語源はメディチ家(Casa de’ Medici)から来ています。
1220年頃にはイタリアで医師の体系化がされています。
これを始めたのが世界で初の薬屋とされるメディチ家です。
メディチ家は、ジョヴァンニ・ディ・ビッチ(1360年-1429年)(上画像)の代に銀行業で大成功しました。
それ以前は、薬売りでした。
メディチ家の紋章は、古来より「赤玉」を並べる家紋になっています。
薬売りの家系ゆえに丸薬が家紋になったのだと言われています。
医学・医療=メディスンの語源であるメディチ家が出てくる以前、医療といえば神様の奇跡でした。
医師といえば神に仕える祈祷師・呪術師でした。
自然信仰の残るジャングル奥地の先住民族が病気にかかると、祈祷師が出てきて、火を囲ってお祈りしたり、神様にお供えしたり、謎の葉っぱや食べ物を食べさせたりして、病魔を退治しようとする。
医師の原型はそのイメージです。
治療とは、今のような白衣の「医師」のイメージではなく、「祈祷師」「呪術師」が「神様の奇跡」の力を借りてするものでした。
なぜヒポクラテスは医学の語源にないのか?
医学を奇跡とは距離をおいて考えようとした人物にヒポクラテス(Hippocrates:紀元前460~370)という古代ローマ帝国の偉人がいます。
彼は今でも「ヒポクラテスの誓い」と言って、医療行為で遵守しなければならない行為の義務を誓約しています。
しかし今でも医学のことを「ヒポクラシー」と呼んだりしません。メディスンと呼ばれます。
ストア派の「ストイック」や、プラトンの「プラトニック」、ナルシストの「ナルシズム」、「エ口」のエ口スのように神話や偉人はそのまま名前に使われても良いはずです。
今では「ヒポクラシー」というと「hypocritical(偽善)」という単語で言われます。
音は同じですが、偽善という言葉はギリシャ語のhypokritikosに由来するので語源は違います。
現在の医学に相当する語源がなかったので、1220年にメディチ家のメディスンを医療・医学と呼称するようになったと考えられます。
ヒポクラテスの始祖神アスクレピオス
ギリシア神話に登場する名医にアスクレピオスがいます。
一説にはヒポクラテスの先祖であるとも言われています。
ヘビを巻きつけた杖を持っていました。
アスクレピオスの杖と呼ばれ、今でも世界保健機関(WHO)や米国医師会のシンボルマークになっています。
古代ギリシャでは病院を「アスクラピア」と呼んでいました。
現在の「ホスピタル」とも違います。「hospital」はラテン語でhospes(客)に由来します。「病人の収容施設」で、hotel(ホテル)と同じ語源です。
アスクラピアは血を使って死者を蘇生させることもできたようです。
今ではオカルトのような話ですが、昔の医療とはそれくらい呪術的な行為でした。
医療とは呪術・おまじないのこと
なのでローマ時代の「医学の父」として名高い「ヒポクラテス」が持ち上げられているので「そんな昔から解剖や薬をやっていたのか!」と勘違いする人がいますが、そんなことはありません。
似たようなことはしていましたが、メディチ家が体系化がするまでは「おまじない」が主です。
メディチ家以前の医療とは「呪術・おまじない」のことです。
それは漢字の「医」の語源にも現れています。
日本でも、医師の「医」という字の語源も、「匚」と「矢」を合わせた形です。
「悪魔を呪術で退治する」という意味があります。
医の旧字は「醫」と書きます。
殹(いえ:殴るの旧字)と酉。この偏だけが残りました。
殹は医(いえ)を敺(う)つと書きます。
矢を呪器としてこれを敺(う)ち、病魔を払う呪的行為を毆(殴)と言います。