昨日亡くなったアメリカの最大級大富豪コーク兄弟の出身大学はMIT。
リバータリアンの最大パトロンのコーク兄弟が亡くなった件
ハーバード大学と対立するマサチューセッツ工科大学でした。
両校とも同じリベラル・アーツ教育です。
しかしコーク一族は政治思想がリバータリアンなのでアイビーリーグの総合大学(University=宇宙の、神の真理を勉強)は嫌っていたのです。
なぜハーバード大学とマサチューセッツ工科大学は対立構図のあるのでしょうか?
その仕組みについて解説します。
基本的な世界の学問水準の区別
まず基本的な世界の学問水準の区別をしっかりつけておきましょう。
この大前提がないと話が分かりにくくなります。
リンク先の図でいうと左側の話が主です。
リベラル・アーツの枠組みの中で神様を強く信じるか、弱く信じるか
基本的にはリベラル・アーツの枠組みの中なので、「神様がすべてを決めている」という中世までの修道院の僧侶・貴族の発想は嫌っているという大前提です。
リベラル・アーツなので基本は「人間を重視する派」では同じです。
Science(サイエンス)を重視します。
その中でもUniversityは神様を重視している歴史があるので、MTIは嫌って対立しています。
「無神論」「無宗教」だと「唯物論」の共産主義と同じになってしまうので、
神様を信じている(数学でいうと「点」が存在している)という大前提はあります。
例えば、毎週教会に行くほど「強く信じている」か、社交的に建前で教会に行く程度の「弱く信じている」かの程度の違いです。
信心が強い人は「神様を重視する派」ですし、信心が弱い人は「人間を重視する派」です。
マサチューセッツ工科大学に大学なんて訳語はない!
マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)はどこにも大学(University)なんて訳語は入っていません。
連合国(UN:United Nations)を「国際連合」と、どこにも国際(international)なんて入っていないのに勝手に訳している日本の完全な誤訳です。
なぜMITが大学(University)を使っていないかと言うと、Universityと対立しているからです。
本来のまま「テクノロジー研究所」「技術研究所」で良かったのです。
「工科大学」と訳すからおかしくなります。
リベラル・アーツの中の対立図
さて本題です。
MITは、大学(University)は宇宙の、神の真理を探求する方向性だから使いたくないのです。
scholarly(学問)の語源は、富裕層であるブルジョアジーの娯楽。
自由な学問といいながら、体系して権威化になっているからです。
大学のUniversityとCollegeの違い
大学のUniversityとCollegeの違いをお先におさえましょう。
結論から書くと、大規模で大学院があるのがuniversityで、その逆がcollegeです。
イギリスの修道院からの発展の歴史があるので、イギリス系ではcollegeを使っています。
規模が大きくなってからuniversityを使っています。
大学(University:宇宙の、神の真理を探求)
・大学院がある。
・大規模。
・collegeから大きくなった大学もある。
(例)
・アメリカのトップ8大学「アイビーリーグ」。ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学
・イギリスのオックスフォード大学・ケンブリッジ大学・ダラム大学、ロンドン大学
大学(college)
・co-という接頭辞から、人の集まりが語源。
・大学院を基本もたない。
・小規模。
・教会からの発展。古来のオーソドックスな大学。全寮制の気質。
・短期教育の専門学部のみが多い。
・リベラル・アーツ・カレッジ。
・伝統からイギリス系の大学が多い。総合大学universityの中にcollegeが入っていることもある。
さらに人間を重視する派のMIT
MIT:Massachusetts Institute of TechnologyのようにInstitute。
機関や研究所を使います。
insistはin-「上に」sist「立つ」 と「人間がする」という中心です。
公然と総合大学(University=宇宙の、神の真理を)は嫌っているのです。
人間を重視するとは、科学的手法をさらに重んじるということです。
scientific(科学)の手法を重んじます。
マサチューセッツ工科大学の他にも名門工科大学としてロチェスター工科大学、カリフォルニア工科大学、ジョージア工科大学があります。
戦前まで日本は学問の対立構図を理解できていた
日本の幕臣哲学者・教育家の西周(にしあまね:1829-1897)は、百学連環(ひゃくがくれんかん)で以下のようにこのことを書いています。
「Mechanical Art(器械技) and Liberal Art(上品芸)原語に従うときは則ち器械の術、又上品の術と云ふ意なれど、<略>技術、芸術と訳して可なるべし。技は支体を労するの字義なれば、総て身体を動かす大工の如きもの是なり」
メカニカル・アートをMechanical Art(器械技)。
リベラル・アートをLiberal Art(上品芸)。
西周は、
Mechanical art・・機械の技術を用いて表現する。器械技。
Liberal art・・上品芸。
と定義しています。
明治時代まではちゃんと、
今でいうとMITを技術をするメカニカル・アート。
総合大学をリベラル・アートとしっかり分けて認識していました。
学術の「学」と「術」の中には上下関係がある
さらに西周は、学術の上下関係にも言及しています。
西周の翻訳と啓蒙思想(その二) ――朱子学から徂徠学へ、百学連環に至るまで
http://ricas.ioc.u-tokyo.ac.jp/asj/html/068.html
より
まとめるとこうです。
「学(Science)」は、つまり先行研究があって、そこから新たな仮説を立てて、次の課題を見出していく。過去の集約から次の課題を見出す。理科(Science)の科学的手法。帰納法。人間を重視する。
「術(Art)」は、すでに神様の決まった形があってそれに合わせていく。演繹法。数学(算術)。神様を重視する。
しっかりと学問=Science(サイエンス)であると理解しています。
この中で「Science(サイエンス:学)」は、2つの区別があるとしています。
分かりやすく要約すると、
「Pure science」・・事実だけを見る。人間を重視する。
「Applied science」・・すでに神様の決まった形(ア・プリオリ)があってそれに合わせていく。神様を重視する。数学。演繹法、予定説的。
大別すれば、ここでも人間を重視するか、神様を重視するかで分かれています。
学問・学術の英語名を見てみると区別がよく分かる
改めて学問・学術の英語名を見てみると区別がよく分かります。
まずはリベラル・アーツの基本。
・リベラル・アーツは、その名の通り「自由7科」。
・神学・法学・医学を上級学部として、その準備過程に哲学、下級学科に文法、修辞学、論理学、算術、幾何学、音楽をおく。
・これらを「自由人の学問」と言うのに対して、工学(理工学・電子工学)、機械学などの技術系学問を「奴隷の学問」という。
その方法論として人がやるのを重視(=科学的手法を重視)の学問の接尾辞には、
-ics
-stry
-ing
神様を重視(logyは話すの語源。神様と対話するため、神様を論破することで神の存在証明をする=論理的、概念的な手法を重視)の学問の接尾辞には、
-logy
あるいは-phy (魂が語源)
がついています。