私の祖母が昔からミュンヒハウゼン症候群の傾向があり、認知症になってからも顕著にそれが表れたので参考のために記載します。


ミュンヒハウゼン症候群とは

ミュンヒハウゼン症候群とは、
傷害行為自体は患者の目的ではなく、手段として傷害行為に及び、自分に周囲の関心を引き寄せることで、自らの精神的満足を他者から得ようとする精神疾患。
と定義されています。

病気を作り出す虚偽性障害の一つで、周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動を行います。

スポンサーリンク

タイプには「ミュンヒハウゼン症候群」と、「代理のミュンヒハウゼン症候群」の2種類があり、
通常の「ミュンヒハウゼン症候群」では、自分が病気に罹(かか)っているとウソをつきます。
「代理のミュンヒハウゼン症候群」では、他人が病気に罹っているように仕立て上げようとします。(近親者が多い。母親の子供に対するケースが多数、配偶者などのケースもある)

例えば、私の祖母の場合には、「他人を支配・管理する」ことを理想とする目標が確固としてあります。
しかし、いきなり「~しろ!」と相手に脅迫的な行動を取っても嫌われてしまうので、一連のプロセス(過程)を踏みます。

単純にこちらが指摘や注意をして治ればいいですが、「私は何も悪くない」「私は良い人」「私は聖人」という神話が本人の中に確固としてあるので、
「私は何も悪くないし、良い人である私を注意するとは、なんてあなたは可哀想な人なの。」
と返されるだけで行動改善されず、「もっと支配しなくては」「もっと不幸を作らなくては」と火に油を注ぐだけになります。

支配・管理までの三段階

ミュウハウゼン傾向の人の支配プロセス

この支配プロセスとして三段階あるように思われます。


①不幸な出来事を作る

妄想で作り出す、あるいはそれが起こるように行動する

◯代理ミュンヒハウゼンの場合
「~さんは病気なんです!」
「とてつもない不幸が起こった。みんな死ぬ。」

◯ミュンヒハウゼンの場合
「私は病気。もう助からない。」
「とてつもない不幸が起こった。私は死ぬ。」

②同情

◯代理ミュンヒハウゼンの場合
「本当に~さんはかわいそうだねぇ。心配だねぇ。」

◯ミュンヒハウゼンの場合
「もう私はどうしようもない。たすけてー。」


③支配・管理

「早くあなたは~しなさい!」
「あなたは~すべき!」
「あなたは~してはいけない!」
「みんなそういっている!」

何が問題なのか

問題となるのは①です。

①が正当な理由であれば、②同情や③支配・管理は問題にはなりません。
例えば、本当に誰かが交通事故にあって(①不幸な出来事)
→かわいそうだねぇ(②同情)
→あなたも気をつけなさい!(③支配・管理)ならまだ分かります。

①の不幸な出来事を作るために必死に行動するので、②同情や③支配・管理が不可思議で押し付けがましい問題行動になるのです。
しかし、
自分で誰かを突き落として交通事故にあわせて(①不幸な出来事)
→かわいそうだねぇ(②同情)
→あなたは気をつけなさい!(③支配・管理)
という行動をするのが代理ミュンヒハウゼン症候群なのです。

①の動機が不純すぎるのです。
自分で病気や事故を捏造・工作しているのです。

病気や事故を捏造・工作して「お前のせいだ」と責任転嫁する神経症的なパターンと違うのは、
本気で「かわいそうだねぇ。心配だねぇ。」という自分への同情を引くパターンになっている点です。

なので職場よりも、「見捨てられ不安」の強い家族間で多い傾向があります。

これが妄想の中だけで終わるなら実害がないのでまだ良いのですが、実際に行動を起こすのがミュンヒハウゼンの特徴的に怖いところです。

表面の行動だけ見れば「②同情もしてくれて、③管理や注意もしてくれる。なんて優しい人なんだろう。」なのですが、
最初の「①不幸な出来事を作る」という自作自演の行動が分かると諸悪の根源の場合もあります。

そこに気付くとあまりに過干渉すぎる普段の行動と距離を置くことができます。


実体験として

例えば、私の祖母はミュンヒハウゼン症候群と代理ミュンヒハウゼン症候群が交互に来ています。

基本は代理ミュンヒハウゼン(他人が可哀想)で、それが叶わなくなると通常のミュンヒハウゼン(自分が可哀想)のパターンに移行します。

私の大学受験の時、合格したことを知るやいなや「うちの孫は病気ですので、大学に行きたくないって私に泣き付くんです!取り消して下さい!」と大学に電話しました。

もちろんすべて捏造話です。

それまでは「勉強、頑張れ頑張れ」と応援していたのに、目標とすることが③「自分の言う通りに支配・管理すること」だったため、
それが適応されなくなった瞬間(勉強させるという管理から外れた瞬間)に、もう一度管理できる状態にさせようと①「不幸な出来事を作る」というプロセスに戻そうとしたのです。

これが叶わなくなると「私は病気でもう死ぬ。私を置いていくのか…。」と詐病を作って引きとめようとしました。

祖母は認知症になってからそれが更に顕著になりました。
先日も「うちの孫は病気です!もう会いたくないって言ってますので、会いに来ないでください!」と近所中に電話しました。
もちろんすべて幻覚・幻聴の捏造話です。

私がかけ直して謝罪しました。あまりに独占欲が強すぎて介護者の周辺関係を排除しようとするのです。

周辺関係を排除したあとに、
「①もうみんなあなたに会いたくないって言ってたわよ。②あなたは可哀想ねぇ。心配ねぇ。③だから絶対に家から出て行っちゃだめよ。」と私に釘を差し、「③私を買い物へ連れて行け。」と命令をする一連の流れです。

妄想だけなら勝手ですが、行動化されると周囲の人が本当に困るのです。

衣食住、すべてにおいて支配・管理をしようとするので、まともに相手をすると気疲れします。

◯深夜などに、幻覚や幻聴で、勝手に大きな物音や大きな声を聞いて、
「とてつもない大きな声!大きな音!とんでもない不幸が起こった!交通事故か!?震災か!?」→「早く私のベッドで寝なさい!」と起こしに来る

◯事故や殺人など不幸なニュースを見て、
「とてつもない不幸な事件が起こった!怖い!」→「あなたも同じ目にあうから外へ出てはいけない!」

◯出かけに行く予定が入ると
「今日は天気が悪い!予定は潰れる!」→行くとなれば行かないと言い、行かないとなれば行くという。
「~さんが迎えにこない!事故にあった!かわいそう!」→「事故だどうする!早く迎えに来て!」

◯いざ出かけると
「家に不幸が起こった!早く帰る!」→出かけることが目的ではなく、相手を動かすことが目的なので、出かけた瞬間に③支配・管理の目標達成して、帰るという①不幸な出来事を作るのパターンに戻る

◯食事や風呂やトイレ(日常生活場面)において
「あなたは食事が食べられない!餓死してる!かわいそう!」→「私が食事を食べさせなくては!」(食べさせようとしてくる)
「あなたは風呂に入れない!きっと溺れ死んでる!かわいそう!」→「私が一緒にお風呂に入らなくては!」(一緒に入ろうとしてくる)
「あなたはトイレに入れない!きっと倒れてる!かわいそう!」→「私がトイレをさせなくては!」(何度もトイレに入ろうとしてくる)
「あなたは服が着れない!かわいそう!」→幼児のように、シャツ、ズボン、ぱんつ、くつした、と張り紙した箱を用意して分けて「ここから出すんですよ!」

生活と行動だけでなく喉元から肛門まですべて管理しようとしてきます。

最近も「あなたは算数が苦手だからそろばん塾に通うんや!通いたいって言ってる!はい、早く通う!」と電話する前に制止しました。

せんべいのお土産をあげたら、裏の生産者の電話番号見て「あなたは不幸だから、これからここに勤めるんだ!」と電話をかけようとしました。

私の親も50代、私も20代なのに、まるで5歳の幼児でも扱うかのような対応です。

管理されっぱなしだった祖父が亡くなってから残りの家族にその矛先が向いたような形です。

今は祖母は認知症の治療をしながら、デイサービスを利用しつつ、長期的には施設入所を検討している最中です。

対処法として

妄想だけだったらまだいいのですが、実際に行動を起こされて「実害」が及ぶのが一番の問題です。

例えば、電話なら最初から電話線を抜いておけばいいですが、本当の緊急時の連絡が滞ってしまいます。
そうでなくてもウソをつけるくらいなので、電話線を元に戻せるくらいの能力は本人にはあるのです。

なので「情報を与えないこと」が対処法になります。

私の場合は、事前に新聞から広告を全抜きするのは当然で、
予定も前日の夜か、その日の朝に伝えて「③不幸な出来事を作る」という間を与えなくさせる工夫をしました。

自分がこれから出かける場合も必要時以外はそれを伝えません。進路や予定も一切伝えません。

これは「支配ゲーム」のようなもので、いつどこから仕掛けられるかが分かりません。

①~③の順不同で行われる場合もあります。

面と向かって相手をすると、話せば話すほどこちらが悪人のような言われようをされて不快になるだけなので、「①不幸な出来事を作る」時点で、それが本当のことかどうかよく検証してみる必要があります。

彼・彼女らの思考回路の①~③の流れが分かれば、冷静に対応できるようになります。