将来が不安、社会が不安、もう何でもいいからぶっ壊してやりたい・・いろんな不安に襲われることがあります。

そんな時は、心を落ち着けてリラックス…ではありません。

意外にも「あえて恐怖体験をすることが心の安定につながる」という心理学の研究があります。

アメリカのペンシルベニア州、ピッツバーグ大学で恐怖に関する社会学を研究するマーギー カー博士は262人を対象にした研究では、

ホラー体験を通じて不安が軽減されたというのです。

The researchers recruited people who had already purchased tickets for ScareHouse, allowing them to study people who voluntarily submit to terrifying activities for social or recreational reasons. In total, 262 people filled out surveys about their mood before and after the experience, and 100 of them wore sensors on their heads that monitored brain activity before and after they went through the haunted house.

After going through the haunted house, about half of people reported being in a better mood, while 33% reported no significant change and 17% reported a worse mood; there were no significant gender differences. Most people said they felt happy after going through the haunted house, while fewer people reported feeling tired and anxious after the haunted house than they did before. Mood increases were particularly significant among people who said they had “challenged their fears,” and among those who described the experience as “intense” and “thrilling.”

全体で、262人が体験前後の気分に関するアンケートに回答し、100人がセンサーを頭に装着し、お化け屋敷を通過する前後の脳の活動を監視しました。
お化けけ屋敷を通り抜けた後、約半数の人は気分が良くなったと報告し、33%は有意な変化がなく、17%は気分が悪いと報告した。有意な性差はありませんでした。
ほとんどの人はお化け屋敷を通り抜けた後幸せを感じたと言いましたが、お化け屋敷の後で以前よりも疲れて不安を感じている人は少なかったそうです。
気分の増加は、「自分の恐怖に挑戦した」と言った人や、経験を「激しい」「スリリング」と表現した人の間で特に顕著でした。

You Love Haunted Houses Because They’re Playing a Trick On Your Brain October 26, 2018
https://time.com/5433554/haunted-houses-fear-brain/

これらは「自発的ネガティブ体験」と呼ばれます。

あえて自分から自己選択で恐怖を体験した場合、「自分で恐怖を克服した」と「不安が減った」とメンタルが良好になり活力が出てくるのです。


ココロのエネルギー背景がある

この世には「モノの社会・経済的な背景」の他に、「ココロの精神・心理のエネルギー背景」があります。

エネルギーの動きとしては、
カオス(chaos 混沌)からエネルギーを吸収して、
ノモス(nomos 世俗秩序)に持ち込み、
コスモス(cosmos ノモスを正当化する、社会規範)
にしていきます。

(中略)
人は外に見える「客体化」された世界を、「内化」という「意味づけ」をして、「主体化」という自分のものとします。

それを外に「外化」という形で表現して、「客体化」した世界を作ろうとします。

この一連の流れがあります。

客体化されれば「I:私は」と社会を変革して同一できます。
主体化されると「me:私の」という内で維持している状態です。

これがどこかで崩れるとアノミーという精神病に近くなります。

前記事
人間のエネルギーの動力源はどこから来るのか?

社会では、
カオス→ノモス→コスモス→カオス・・
と混沌が秩序となり、社会化され、また崩れ・・
の破壊と再構築を繰り返しています。

同時に、
個人はそれを内化として意味を合理的に自分に取り込んで、客体化して外の世界を見ています。

大雑把に例えると、

建築:ロマネスク→ゴシック→ルネサンス→バロック(ロココ)→ネオクラシック→モダン→ポストモダン
文学・絵画:古典→観念→ロマン→写実→自然→抽象→シュルレアリスム→構造→モダン→ポストモダン
政治・経済:クラシックリベラル→リベラル→コンサバティブ→ネオリベラル→ネオコンサバティブ→リバタリアン(クラシックリベラル)
音楽:ルネサンス→バロック→クラシック→ジャズ→ロック(→メタル→デスメタル)→ポピュラー→現代音楽

と流行りのものが「新(ネオ)」だの、「次の(ポスト)」だの、「現代(モダン)」だのと呼び名を付けながら、過去の回帰運動をして螺旋のように回帰運動をしているのと同じです。

日常から非日常へ落ちた時の対処法

火災・津波・台風・竜巻・大雨・断水・落雷・土砂崩れなどの災害、疫病、感染症、戦争、金融危機、世界恐慌、このような未曾有の危機的な出来事はいつあなたの身に起こるか分かりません。

「一生安泰だ」と思っていても、家族が死に、友人が死に、恋人が死に、病気になり、解雇され・・と唐突に非日常へ落ちることがあります。

そんな時にホラーを私はおすすめします。

自分自身の不遇で不安な境遇は、もはや合理的に立ち直れるものではないです。

合理的に立ち行かないからこそ、落ち込むのです。

論理矛盾だらけの「不合理・不条理」、

いや、もはや

論理すらもない「非合理・非条理」

の世界に叩き落されているからです。

そのため、その非合理・非条理の心理を外界に投影する必要があるのです。


おすすめのホラー漫画

私の大好きなホラー漫画が伊藤潤二先生の作品です。
伊藤潤二氏は、ホラーマンガ会の巨匠「楳図かずお」氏の直弟子と謳われる人物です。

日常の中の「悪夢」をホラーとして見事に昇華しています。

伊藤潤二傑作集4 死びとの恋わずらい


四つ辻の美少年、悩む女、影、絶叫の夜、白服の美少年、連作「怪奇ひきずり兄弟」、次女の恋人、降霊会、幻痛屋敷、あばら骨の女を収録。

伊藤潤二傑作集7 首のない彫刻

赤い糸、中古レコード、贈る人、橋、サーカスが来た、蜂の巣、地図の町、首のない彫刻、薄命、寒気、案山子、遺書が収録。

濃い作品が多いので伊藤潤二の全体像が堪能できる巻かなと感じます。

「サーカスが来た」が、のちの「ギョ」シリーズの作品の面影を感じます。非日常の劇場的な怖さの原型を見ることが出来ます。

伊藤潤二傑作集8 うめく排水管


超自然転校生、うめく排水管、血球樹、首吊り気球、あやつり屋敷、肉色の怪、異常接近!、土の中が収録。

潔癖症がストーカーに追われるうめく排水管も面白いですが、
「首吊り気球」は、有吉&マツコデラックスの「怒り新党」というテレビ朝日番組の中でも絶賛されたほどの秀逸作。

自分そっくりの顔した気球が首を吊りに来る話。最高傑作とも名高い話です。

伊藤潤二傑作集9 墓標の町


墓標の町、仲間の家、なめくじ少女、隣の窓、漂着物、ご先祖様、長い夢、トンネル奇譚、銅像、浮遊物、白砂村血譚が収録。

「長い夢」「トンネル奇譚」は個人的に好きです。

長い夢は時間的な恐怖を描いた作品。トンネル奇譚は実に悪夢的な世界観が強くて印象深いです。

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伊藤潤二のホラー漫画がキンドルで大人気!評価レビュー!

おすすめのホラー映画

日本でホラー映画と言うと日本の貞子のリングやらせんの心霊シリーズ、海外だとアメリカの人気ホラー映画もありますが、そういったゾッとする怖さではなく「意味不明な怖さ」「意味不明なホラー」を私はおすすめします。

そちらの方が「非合理・非条理」の心理状態に近いからです。

田園に死す:寺山修司

例えば寺山修司の作品です。俗に言うアングラ的な怖さが心理的に共感します。