世界中での感染拡大を受けて2030年までに世界で看護師が460万人不足と予想されています。
世界中で医師や看護師を増やそうとする流れが起こっています。

報告書は看護師育成に向けた投資を増やさなければ、2030年までに世界で看護師が460万人不足すると予想。看護学校卒業生を増やす必要があり、各国は看護師を職に留めるため、報酬や研修、就業機会といった問題に対処すべきだと訴えた。

看護師、30年までに世界で460万人不足-新型コ口ナで課題浮き彫り 2020年4月7日 Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-07/Q8E2XRDWLU6B01

しかし日本は増やそうとしないでしょう。

医療現場で医師や看護師の人手不足による需要は常に叫ばれているのに、なぜ増えないのでしょうか。

なぜかというと日本の医師・看護師の定員制限が、社会情勢と全く関係のないところで運用されているからです。


厚労省と文科省の二重支配の構造

医師も看護師も需要があるのに増えにくいのは、厚労省と文科省の官僚の二重支配構造のためです。

臨床教育・国家試験は厚労省。

医学部教育・大学院・大学病院は文科省。

大きい病院といえば「国立大学病院」なのに厚労省が弱く、文科省のものなのです。

だから多忙薄給にもなります。

医学部定員も増やせず、教員側も雑務と臨床教育で多忙薄給です。

大学受験(文科省)→医学部教育(文科省)→臨床教育(厚労省)→国家試験(厚労省)

その後、
→大学院(文科省)
→研究機関(文科省系列)
→大学病院(一番大きくて権威ある病院)(文科省)
→民間病院(厚労省)

・・このように入り口と出口が文科省なので、民間の大病院、その下の小規模病院やクリニック、訪問看護ステーション等が人手不足になります。

文科省に持っていかれる医学部

俗にいう旧帝大の医学部の卒業生のほぼ全てが、医師等が国家資格を得ても病院勤務せず、そのまま大学院→大学病院、その他の研究機関に行ってしまうのはそれが理由です。

文科省に取り込まれるからです。

こうなると臨床の技術が育たず、研究だけの人になります。

結果、現場には増えなくなるわけです。

文科省の柵の中で定員も増やせないのです。


社会で足らなくても大学受験の定員で数を決めてしまう

例えるなら、大学受験の定員と、就職採用の定員の違いです。

就職採用は社会情勢で増減しますが、大学受験の定員は影響を受けません。

社会的に医師や看護師が不足して厚労省が問題化しても、文科省の管轄なので「いや別に定員は間に合ってますよ」と増えないのです。

大災害が起ころうとも、世界経済危機が起ころうとも、大学受験の入学定員には関係ない話ですよね。

入口が狭いので、出口から出てくる人も少ないです。

設置基準上、大学の文科省に属してしまうので医学部を企業が独自に設置することもできず。

もし厚労省がやれるのであれば、企業が医学部の学費を全額負担してくれる無料医学部等が出来ても良いのです。

そうすれば医師や看護師も増えます。

社会人から看護師になる方法・裏ワザ~日本の看護学校~

なぜ不足しているのに看護師の給料が上がらないのか?

毎度、不足不足と言いながら、看護師の昇給の話が並行して出てこないのは、正看護師は准看護師の下の給料水準に引っ張られているためです。

例えば、採用募集要項で正看護師と准看護師で給与待遇に数十万円も差額があっては困ります。
なので給料の低い准看護師の方へ、正看護師を合わせようとしてしまうのです。

正看護師だけ上げて、准看護師との格差が広がるのは避けたいので、准看護師と合わせて下げる方向へ合わせようとしてしまうのです。

結果、昇給は病院の裁量で手当任せになってしまいます。

なので昇給しても「数千円程度の差」しかなくなるのです。

医師と看護師の資格の所得格差も開くわけです。

准看護師は都道府県知事の知事試験による知事資格です。文部科学省が指定した養成所で2年で取得します。
正看護師は大学の医学部や看護学科の3年、4年のカリキュラムで取得します。
知識でも技術でも大きく差があります。

本来であれば看護師、准看護師の区別をなくし、すべて正看護師として一括化すれば良いのです。

看護師は本来、医師と同等の水準で給料をもらっていてもおかしくはありません。

下に准看護師という制度を作って、格差拡大防止を口実に給料を上げず、安く病院で雇用しているカラクリです。


日本医師会より日本看護協会の方が強い?

日本医師会も日本看護協会も自民党の中心支持母体ですが、そこまで大きな差はありません。

最新(2020年現在)の財務諸表を見ても、
正味資産が日本医師会(年金除く)は188億8505万6059円。
日本看護協会が139億4292万3977円。

数の総数のになれば日本看護協会の方が勝り、日本医師会が負けています。

医師より看護師の数の方が4倍以上多いのです。

なので選挙で看護協会の票が抜けたら自民党は危ういのです。

もし医師や看護師の冷遇体制を崩したいのであれば、ひっくり返すことも可能なのです。

日本医師会 決算報告書(財務諸表/収支計算書) 平成30年度
http://dl.med.or.jp/dl-med/jma/gyozai/H30kessan.pdf

日本看護協会 貸借対照表 平成30年度 2019年3月31日現在
https://www.nurse.or.jp/home/about/koukai/pdf/3/taishakutaishouhyo.pdf