どうも看護師/心理カウンセラーの時田憲一です。

みなさまコロナで自粛お疲れさまです。

最近「医療者なんかに協力して何のメリットがあるの?」と聞かれました。

とても気持ちが分かります。

・自分は病気になっていない
・自分の周りでは病気になった話を聞かない
・自分はまだ若いから関係ない
・正直みんな滅んでもいい、知ったことか

私も義務教育が大嫌いなほど会社や学校や国といった権威権力が嫌いです。

なので逆に逆らいたくなります。

しかし実際に逆らったら自分にメリットがあるのか?
少し考えてみましょう。


そもそも医療や福祉職は本当に必要か?

そもそも医療や福祉職は必要なのでしょうか?

結論から言うと「なくなればいい」です。
なぜかというと「必要ない」というのは誰もケガも病気もせず健康な証だからです。
仮に病気になったら専門職の人でなくても治してくれているということだからです。

では医療や福祉職とは何なのか?

医療や福祉職は「ピットクルー」です。

例えば、レーサーのサーキットをイメージしてください。

ピットと呼ばれる車両を整備する場所があります。レース中にそこに入ると、大急ぎでピットクルーが、タイヤ交換したりして車を整備してくれます。

医療や福祉職はそれと同じです。

サーキットのレーサーが一般的に社会で働くサラリーマンなどの一般労働者。
サーキットのピットクルーが医療福祉の従事者です。

もしピットがないままレーサーがサーキットをしたらどうなるでしょうか?
故障やクラッシュをしたらレースに復帰できません。

レーサーをレースに戻したほうが効率的

看護師の創始であるナイチン・ゲールが登場するクリミア戦争の頃(1850年頃)までは、人はケガや病気になったらもう放っておかれて死ぬだけでした。
当時は軍人が多く、ケガしたらもう復帰は無理だと死んでいたのです。

しかしイギリスの経済学者デヴィッド・リカードの比較優位論で述べられているように、
例えばパソコンを打つのが得意な人がケガをして働けなくなったとしたら?
その人をクビ・解雇して総戦力を削ぐよりも、治って復帰してもらうか、その業務を他の得意な人に任せてまた復帰してもらったほうが効率が良いのです。

会社でも働ける人を一度の病気やケガという業務以外の理由でクビにしてよりも、治って復帰してもらったほうが新しく人を雇う手間もコストも減ります。

直して修理して、再度レースに参加してもらったほうが全体の経済効率が良いのです。

経済効率が良いということは利益をもたらすということです。


「本来ある力」を戻す

医療や福祉職は「本来ある力」を失ってしまった場合に、それを支援・整備して助けています。

同時に、「どこを整備すれば、また走れるようになるだろうか」と発見・発掘することも医療福祉職の役割です。

これは雇用でも、障がい者でも同じことが言えます。

障がい者が比較優位を発揮できるような、仕事を開発して、社内分業して、組織内で分業を進めれば、効率や付加価値が向上するのです。

障害者の経済学

自分にデメリットになる(ゲーム理論)

「でも私は関係ないから周りと逆のことする」
「私は死なないから」
「私は病気になっていつ死んでもいいから周りも知ったことか」
「病気になったら私の自業自得だし相手も自業自得」

と開き直っている人もいます。

こういう人は、いざ自分が病気やケガをして「自業自得」を味わうことになります。

しかし実はこの行動は実際に病気やケガで「自業自得」になる「前」からデメリットが大きいです。

なぜか?

「協調行動」からかけ離れているからです。

これはゲーム理論における囚人のジレンマという実験を基礎に
「長期的にどの戦略が有利か?」と1984年のミシガン大学でのロバート・アクセルロッドのPCプログラム大会の何百回もの実験で検証されました。

この中で「相手と同じ行動をする「協調」のプログラム」が戦略で最高得点を出しました。

「協調」とは、別に全員と積極的に「仲良くする」「協力する」というわけではなく「共感する」「裏切らない」という態度さえ守れば「協調」となります。

ちなみに「裏切り行動」は一時的に短期的には効果はありますが、長期的にはデメリットしかありません。

医療や福祉でも同じことが起こります。

例えば、感染症を抑え込もうと大多数が自粛している時に裏切り行動をすると、最終的には全体の感染の確率を上げてしまうので自分が損をします。


信頼と情報を失って損をする

また「情報の非対称性」が起こります。

「情報の非対称性」とは、アメリカの理論経済学者ケネス・アローが1963年に指摘した現象で「相手が情報を持っているのに、自分には情報が手に入らない。」という状態です。

裏切り行動をするので、多数派からは信頼されません。

信頼がされないことで「情報が提供されない」あるいは「情報が見えなくなります」

個人の行動によって「自分はこういう立場なんだ」という「固定観念」や「先入観」が入ってしまい、動かせなくなります。認知心理学の「スコトマ(盲点)」が起こって他の現象が見えなくなるのです。

すると「だまされる確率」が上がり、損をするようになります。

まとめ

・医療や福祉職は「ピットクルー」
・レーサーをレースに戻したほうが効率的
・「協調行動」から離れると自分にデメリットになる
・信頼と情報を失って自分が損をする

このような理由から医療者に協力していたほうが自らにメリットがあるのです。

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