NHKの動画で「布のマスクでも不織布のマスクでも、ある程度飛沫の拡散を防げることが、飛沫を可視化した実験で確認」という動画が出ていました。
◎布マスクと不織布マスクの違い
・布マスク・・俗に言うガーゼマスク。マスクの中にガーゼが織り込まれています。戦前に使われていた古典的なものです。2020年の新型コ口ナウイルスの流行で国民全員に「アベノマスク」と言われて届けられました。
・不織布マスク・・繊維を織らず様々な方法で結合させたもの。不織布を重ねたりフィルターを使用して目の細かくしています。
さて、この動画がツッコミどころ満載です。
NHKの布のマスクで防げるという動画
布のマスクでも不織布のマスクでも、ある程度飛沫の拡散を防げることが、飛沫を可視化した実験で確認できました。新型コロナウイルス感染拡大防止のために覚えておきたいマスク使用時のポイントです。 #あなたに知ってほしい #NHKモバイル動画https://t.co/UqZza6JDkJ pic.twitter.com/U7VvV0gCc3
— NHKニュース (@nhk_news) July 1, 2020
どこがおかしいかというと、これはウィルスの感染を見ていないのです。
単純に「マスクを付けて唾液がどこまで飛ぶか」しかありません。
どこがおかしいのか?
具体的には
・「ある程度」という目視だけで実際に数値がない。
・布マスクは「呼気時で(息を吐く時)」「飛沫時で」「前方のみ」の時に減るという、もはや「超限定的」。
・呼気(息を出す時)のみで、感染として吸気(息を吸う時)が比較されていない。
・ウィルスなので飛沫感染ではなく、水分を帯びていないウィルス本体の飛沫核感染(ひまつ”かく”かんせん)で見ないといけない。
「飛沫核感染」の「吸気」で見ないと意味ない
当たり前ですが、感染は「息を出す時」(呼気)ではなく、「息を吸う時」(吸気)に罹(かか)ります。
息を吐き出して感染するわけではなく、息を吸って→ウィルスが咽頭に付着することで罹(かか)ります。
そしてウイルス本体は飛散する水分だけではなく、本体である「核」から罹(かか)ります。
これは飛沫感染に対して、ウイルス本体である「飛沫核感染」と呼ばれています。
この時点で
「あれ?肝心の吸気時は?飛沫感染ウィルスだから飛沫核。飛沫”核”感染の吸気時でなんで比較しないの?」
と医療従事者どころか、初学生(医療系学部の一年生)でもおかしさに気づけます。
「卵の黄身」がアレルギーの人に対して「卵をカラごと飲み込めば問題ない」と言っているのと同じです。
「本体」を見ていないのです。
医師の仲では
「布マスクは、花粉でさえ貫通して俺を苦しめるのに、もっと小さいウイルス核が布マスクで防げるわけないだろ。」と言われています。
NHKの検証動画は、医師会やアメリカの保健省にさえも「布マスクはダメ」と言われて当然だったことを証明しているようなものです。
吸気に対してマスクは意味ない?
たまに
「マスクは自分が飛沫(呼気)して外に感染させるのを防ぐ目的であって、他人の飛沫を吸う(吸気)分には意味がない。だからマスクは意味がない。」
ということを言う人がいます。
マスクは一方通行しかない。マスクは片側だけのマジックミラー。マスクは出口は防ぐが入り口は防がない。
という謎の勘違いから、マスクの無意味さを主張している人がいます。
確かにマスクをしていても感染した事例があります。
これらの事例は「感染者に近づきすぎていた」「マスクをしっかり装着していなかった(左右上下のスキマから感染した)」ことに起因しています。
逆に「マスクが無意味」という人がいたら、
「ではなぜマスクをしていると息苦しくなるのですか?」
と聞いてみると良いです。
息を出すのを抑えられるのに、吸うことに意味がないのであれば、マスクで呼吸で吸う時は楽。
つまり息苦しくなることもないはずだからです。
当たり前ですが、吸気へのマスクも感染予防効果はあります。
おさらいですが、
ウイルス核が0.1マイクロメートル(μm)以下。
通常の飛沫感染のウイルスであれば5マイクロメートル(μm)です。
0.1マイクロメートル以下の吸気を防ぐには医療用のN95マスクや防じんマスクと呼ばれるものが効果があります。
例えば、防じんマスクとサージカルマスクの比較論文を見てみましょう。
防じんマスクは市販のサージカルマスク(不織布マスク)よりも、更に小さい粒子を防ぐ目的のマスクです。
なので自分が外に出す呼気ではなく、外に存在する防塵を防ぐ。つまり吸い込む吸気を防ぐ目的です。
2003 年の SARS 流行時に香港で医療関係者の感染に関する調査12) において,非感染者 241 名でマスクないし N95 マスクを着用していた者は 143 名と 60 % であったが,感染者 13 名中にマスクまたは N95 マスクを着用していた例はなかった
粒子状物質の曝露防止のための呼吸用保護具 nvironment and Building Services 2019.6.1
防じんマスク等のフィルターとサージカルマスクとの比較。
両方とも飛沫核の0.1マイクロメートル(μm)以下の粒子を10%以下の濾過率で防いでいます。
水分を帯びたウイルス飛沫感染である5マイクロメートル(μm)を想定しても1%以下の濾過率で防いでいます。
加えて、コロナと比較される同じサイズのインフルエンザウイルスにおいて、
感染した人はマスクをしていなかった。感染しなかった人はマスクをしていた。
と分かりやすく出ています。
マスクは出す呼気の感染を防ぐだけではなく、吸気の感染も防いでいるのです。
しっかりした不織布マスク・サージカルマスクを使いましょう
知恵のある人はしっかりとしたフィルターの入ったマスクを使用しましょう。