今までの経緯は過去記事でまとめました。

・2020年前半は「PCR検査を減らせば診断されるコロナ患者も減るんだ!PCR検査が悪い!」と躍起になっていましたが、検査数以上にコロナ患者が増えました。

・2020年後半は「コロナもインフルエンザと同じ」と思っていたら、インフルエンザ発症者はほとんどおらず、コロナ患者が一気に増えて「全く異なるウイルス」ということがはっきりしました。

結果、「コロナは単なる風邪」ではないとはっきりと分かり、彼らが「そうだ!PCR検査方法が悪いんだ!」となけなしのPCR検査批判へと転換していきました。

しかしPCR検査の議論になった瞬間に、PCR検査のエビデンス(科学的根拠)が合理的すぎて釈迦に説法となり、批判するほど墓穴を掘ることになるので分が悪く先細りしました。

現在(2021年度)でも、まだ話題にあがると「あーまたこの勘違いね」と分かりやすくなりました。
「反PCR検査」「コロナ存在しない単なる風邪論」はどこで食い違っているのかをまとめます。

大きくは3つです。

1、Ct値とサイクル数の混同。
2、PCR法(定性的)とPCR検査(定量的)の混同。
3、マルチプレックスPCR(Multiplex)の誤用。

反PCR検査やコロナ存在しない単なる風邪論が、どこで食い違って間違えているのかがこれらです。


1、「Ct値」と「サイクル数」の混同

誤:「日本はCt値が40-45と多いから影響のない死骸のようなウイルスまで検出してしまう、偽陽性になる」
正:
・原因と結果が逆。サイクル数は原因、Ct値は結果。Ct値(結果)をサイクル数(原因)と混同している。

・Ct値とは何サイクル数目でウイルスの閾値を超えたかの値。
(例:Ct値=野球の最終得点、サイクル数=野球の回数)

・そもそもPCRは上限40-45サイクル数まで機器を回す(検査原則で世界共通)
・原則、サイクル数40以上はすべて陰性になる(検査原則で世界共通)
・サイクル数が少ないのにすぐCt値が決まった=ウイルスをすぐ見つけられるほどたくさんあった=危険度高い。
・100サイクルでも1000サイクルしても40以上で陰性。40サイクルした結果、それ以下で見つかっているので危ない。
・35でも感染力なしではなく増えるケースもあるので、観察や再検査が必要。
・国の事後対応に関わるので、結果の陽性とするCt値を「世界基準で40にしましょう」とか、「厳格に35にしましょう」と国で対応が変わる。カウント数は40-45で変わらない。
・PCRは少なめに採れることはあっても多めに採れることはない検査。35前後の陰性でも、検出数が少なかったのか、回復で減少しているのかは精査する必要があるので観察や再検査が必要。

例:野球は原則9回(サイクル数)まで回して勝敗を決めるのは当たり前。9回裏まで勝敗は決まらないが、途中で10点差でコールドゲーム、勝敗が決定(Ct値)する。
・9回より前にコールドゲームしたら、よほど相手が強い(陽性)。
・カウント数とCt値を混同していると「日本はCt値が多いから陽性が検出されてしまう」と読み間違える。
・「日本は野球で9回裏までプレイするから、相手が勝ってしまう」「日本はコールドゲームの点差が高いから、相手が勝ってしまう」と言うおかしな主張になる。
・野球の回数を少なくしてもコールドゲームで勝てるわけではない。

・例えるなら、Ct値を低く設定するとは「相手の力量からコールドゲームの勝敗を決める点差を10点じゃなくて、7点に引き下げて判断するかどうか。」という議論であって「野球の回数を9回から7回にすれば勝てる!」という意味ではないのです。

2、「PCR法(定性的)」と「PCR検査(定量的)」の混同

誤:「開発者のキャリー・マリス博士はPCR検査は使ってはいけないと言っている」
正:
・そもそも言ってない。

・マリス氏は「PCR法」の開発者。「PCR検査」の開発者ではない。PCR法は遺伝子の特定領域を増幅させる方法=定性分析。1980年代のもの。30年以上前の話。まだPCR検査すらなかった。
・むしろ当時からマリス本人が「感染症の診断にも応用できる」(自伝のマリス博士の奇想天外な人生 p165 10行目)と言っている。(※1)

・実際に1990年代のマリスの研究から発展させて、2000年代にロッシュ社が「PCR検査」として応用。
・20年以上前のPCR法から今まで発展・応用して信頼性と妥当性が研究で確かめられてきた。
・発言の引用元をたどるとHIVの検査にPCRを使うのに「定量PCRというのは矛盾している」と述べた一言の引用。しかも1996年にジョン・ローリッセンという別人による「伝聞の伝聞」で文献も研究もない。根拠すらない。この部分だけ切り取ったとしても「使ってはいけない」とすら言っていない。


3、マルチプレックスPCR(Multiplex)の誤用

誤:「他のインフルエンザやアデノウイルスやマイコプラズマまでコロナウイルスとされる」
正:
・マルチプレックスPCR(Multiplex)は複数の遺伝子を同時に増幅・区別する技術。
・コロナならコロナが陽性になる。インフルエンザならインフルエンザが陽性になる。他のインフルエンザやアデノウイルスやマイコプラズマまでコロナウイルス等々、対象となれば「この中のどれかが陽性」になる。「全部コロナになる」ということはない。インフルエンザがコロナウイルスに変わったりしない。

例:「任天堂のゲーム機でマリオもカービィもゼルダのソフトも遊べますよ」であって「任天堂のゲーム機で遊べる=つまり全部マリオのソフトということ」にはならない。

(参考)(※1)