ホームの認知症・要介護5の祖母は、子も孫も夫もすべて忘れてしまった。

アルツハイマー型なので脳がどんどん萎縮して小さくなっていく。
原初的な記憶に戻っていく。

今では幼少期に過ごした新潟の様子を今目の前にあるかのように一人で話すだけ。

しかし日本赤十字社の看護師として、お世話になった医師だけは忘れずにいるという妙なことになっていた。

TwitterやFacebookでこのことを書いたら、意外にも同じような体験談を多く寄せていただいた。

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私や母が話しかけても「あっよーちゃんだねぇ」「まだ用意しとるんか」等々、どの時制で誰の話をしているのかも不明な会話になる。
見当識障害(いつ、どこ、誰、を忘れる)と呼ばれる。

しかし昔なじみの病院の先生が回診でくると「あっ、○○先生。こんにちは。クランテは大丈夫ですか?」と働いていた時の調子に戻る。

昔なじみの病院の先生の回診回数よりも、私の祖母への訪問回数の方が多いはずだが、回数の問題ではないようだ。


認知症が忘れていく人の順番

普通は自分の血縁から遠い人物から忘れる。
たまに瞬間的に思い出したり、単語として出てくることはあるが、面と向かっても覚えていることはない。

男性だと、知人→友人→親戚→子ども→妻
女性だと、知人→友人→親戚→夫→子ども

の順で忘れていく。

「大切な人」が、「男性だと妻」、「女性だと子ども」というところに違いがある。

今回、昔なじみの医師を覚えていたことで気付いたのは、認知症が最後まで覚えているのはその人にとって「大切な人」というニュアンスは少し違うということだ。

正確には「自分の自己効力感の支えとなる人」というのが正しい。

自分の存在理由。自分の自尊感情に関わる人。自分の自信につながる人。

このような人を最後まで覚えているということだ。

男性だと妻、女性だと子どもなのは「自分の自信につながる」のがそれだから。
「私にとって妻の存在は大切だ」「私にとって子どもの存在は大切だ」ということなのだ。

私の祖母の場合、看護師としての自信が強かったので、家族以上に仕事に関わる人物を忘れずにいたということだ。
ちなみに同僚のナースのことは忘れてしまっていたが、医師のことは忘れずにいたのは権威的なものだからだろう。

意外なことを学ばせていただいた。

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