火災・津波・台風・竜巻・大雨・断水・落雷・土砂崩れなどの災害、インフルエンザやコロナや結核などの疫病、戦争、金融危機、世界恐慌、このような未曾有の危機的な出来事が起こった場合、なぜか「動じない私すごい!」「俺TUEE!」と、根拠なく虚勢を張って言い出す人がいます。
このような人たちはどのような心理状態にあるのか?
結論から言うと、不安が強い人ほど、逆に空威張り(からいばり)、虚勢を張ろうとします。
危機的な出来事に対する典型的な思考のパターン
典型的な思考のパターンは決まっています。
①自分は全知全能であるという大前提を立てる
↓
②自分の無知や失敗を恐れる(未来を恐れて思考停止、情報遮断)
↓
③過去の情報で何とかしようとする+国や宗教などの権威的なもので裏打ちしようとする
↓
④自分=権威と同一視して、自分に逆らう者や、一生懸命やっている人を第三者視点で誹謗・中傷するようになる
↓
⑤新しい意見は一切受け付けなくなる=情報が入らなくなる=判断を間違える
↓
⑥無知のまま失敗する
↓
①振り出しに戻る
出来事にみんなが注目してほしいので、見捨てられ不安から自分に注目を戻してほしいという自己賞賛欲求。
無知な自分が暴かれるのではないかという、不安から権威を盾に相手を見下してやろうとする仮想的有能感。
前記事では、危機的状況になると認知バイアスがかかって、「私は大丈夫!」という正常性バイアスや、「政府はすごい」「国はすごい」という権威への追従バイアスが発生してしまうと書きました。
レジリエンスという正常反応
そもそも出来事は本来はストレスになっているのです。
このストレスは「外力による歪(ひず)み」を意味します。
それに対する力が「レジリエンス」です。
「外力の歪み(ひずみ)を跳ね返す力」と言います。
危機(クライシス)時にストレスを受けて、レジリエンスが起こるのは当然です。
ストレスを受けた分の自尊心を回復させようと、「動じない私すごい!」「俺TUEE!」「私は大丈夫!」「政府はすごい」「国はすごい」とやってしまうのです。
いわば正常な反応です。
逆にこれが起こらないほうが、ストレスを抱え込みやすいので危険です。
なので相手にした場合、「それはおかしい」と否定するのではなく、「あっ、この人はストレスから回復しようとバイアスをかけているんだ。」と受容する姿勢も大切です。
問題は本人が騙されやすい状態にあることと、被害者が出ること
この問題は、他人を見下そう、排斥しよう、とする手法をしてしまうので被害者が出てしまうことです。
本人が科学的で合理的な「冷静」と、他人を見下す「冷笑」を取り間違えてしまったことに起因します。
そして本人が非常に「だまされやすい」状態になってしまうことが問題です。
なぜ「だまされやすい」という状態にあるのでしょうか?
それは行動経済学で「情報の非対称性」にあります。
情報の非対称性とは?
情報の非対称とは、経済学で「商品の購買時、売り手は商品のことをよく知っているのに、買い手は商品のことをよく知らない状態」のことです。
例えば、売る人はその商品のことをよく知っていますが、買い手は知らない状態。
売る人はその商品がニセモノでも、買い手に売ることができてしまいます。
よく医師と患者の関係で起こります。
医師は薬のことをよく知っていますが、患者は処方された薬をよく知らずに飲んでいることが多いです。
なぜ威張る人、虚勢を張る人がだまされるかと言うと、
①自分は全知全能であるという大前提を立てる
↓
②自分の無知や失敗を恐れる(未来を恐れて思考停止、情報遮断)
↓
③過去の情報で何とかしようとする+国や神などの権威的なもの(過去の権威)で裏打ちしようとする
↓
④自分=権威と同一視して、自分に逆らう者や、一生懸命やっている人を第三者視点で誹謗・中傷するようになる
↓
⑤新しい意見は一切受け付けなくなる=情報が入らなくなる=判断を間違える
↓
⑥無知のまま失敗する
↓
①振り出しに戻る
②の段階で、自分の無知や失敗を恐れるがゆえに情報遮断してしまうからです。
「情報の非対称性」により、自分が「無知な買い手(患者)」になってしまいます。
加えて、権威バイアスで権威に追従してしまい、自分の権威を補おうとするため、他者の排斥行動に出ます。
すると更に人が少なくなってしまうので、更に情報遮断されて孤立していきます。
こうして、本人が内心、最も恐れていたであろう「無知による失敗」が実現してしまうのです。
しかも④過去の情報だけで納得しようとしてしまうので、新たしいことへの解決法としても最も「遅い」方法になってしまいます。
最大の弱点であり、最大の建設的思考法
彼・彼女らの最大の弱点は「ではどうすればもっと良くなりますか?」と質問すると、何も答えられなくなります。
逆に自分がこの罠にハマらないようにするために、常に自問自答していく必要があるのです。