話題の論文について著者と語る(1)吉田寿夫・村井潤一郎(2021)「心理学的研究における重回帰分析の適用に関わる諸問題」心理学研究92巻

日本心理臨床学会の動画でリアルタイムで1000人以上に視聴されたビックな話題。
日本の心理学の最先端の人たちが集まっていました。普段ならこんな面々がリアルで集まることはないですが感染症の関係でZOOMが普及して実現した議論でした。

説明がわかりやすくてとても納得した

重回帰分析は条件付き平均予測の線形のモデル化であり、重回帰係数は他の説明変数をコントロールした元で意味を持つ量であり、これは重回帰分析には限らない。
説明は記述と因果の間、各種統計的因果推論法で心理学は遅れている。そのため透明性と頑健性の向上を。

因果推論においては、医学では臨床と生物統計の分業、心理学者と心理統計学が進むという意味では似ているのかもしれない

重回帰分析、ほとんどの人があそこまでできる人がいないのと、教える側も分かっていないことが多いのに、重回帰分析さえ叩けば不採択にできると、中途半端な典型的にわかがドヤってきて研究全体が抑止される懸念はよくわかった。提案とワンセットでないと。

これに耐えうるための、岡田謙介先生の図が本当に良かった。
透明性と頑強性の補強。
記述、説明、因果のどの段階で議論しようとしているのか。
理論構築の話をしているのか、実証に使う方法の運用の話をしているのか。
統計学の話なのか心理学の話なのか。
頭に入っていると整理されると思う。
なかったら議論が平行線でした。

どこのレベルで議論しているのかの全体像が可視化で見えないと明らかにズレた焦点になってしまうので、岡田先生の図がとても分かりやすかったので助かった。


統計の波に飲まれた心理学

事象が前の事象の影響を受けるのは当たり前(例:今日の天気は昨日の天気に影響される)だけど、統計で確率論をするときにいまだにベイズ確率を使えみたいなのが一部であって、デンプスター-シェーファー理論 (DST)を入れたらルール違反みたいに言われる。

帰無仮説の元で検定統計量がその値となる確率(p値)がまさにそれ

この10年でベイズ統計か頻度論かで論争されて、心理学もその波に飲まれた。

どちらかというと心理学研究で重回帰分析の話題している時に、ちょうどコロナで疫学研究方面からの統計識者の興味があったようにも思う

この1年のドメスティックにベイズ理論を当てはめて、やらかしてしまったのがPCR抑制論だった。

心理学の2つの分野

現実として医学部だと臨床と研究に分かれているように、心理学部もこの10年間で臨床と非臨床の差が大きく出てきたと思う。心理士と心理調査士を分けたのは今後の展望としてよかった。

医師にしても心理士にしても、入り口が治療の臨床のイメージしかないので、非臨床に踏み込んだ時に情報空間に棲み分けのワールドが展開していることに気づき、各々で利用可能な方法論を採取するのだけど、なんでその果実を採取するのか、逆になんでその果実を採取しないのかみたいな農園主に言われる

記述分析と説明分析と因果分析で、統計的な因果推論法が発展してきた中で心理学も当然その波に飲まれたけど、その分、説明分析の段階で実証の脆弱性をどう補強していくか。

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カウンセラー/心理学者は2種類いる


心理学=カウンセラーと心理学者

カウンセラーなら心読めるんでしょ
というエンターテインメント的な浅い世界を入口として、
心理学者なら統計できるんでしょ
的な学術的な深い世界で独自性を求めるような話。

パソコン触れるなら何でもできるんでしょ的なアレに似ている。

ここでカウンセラーなら統計できるんでしょというのが一番突き刺さる。
臨床特化(患者治療)と非臨床特化(統計根拠作り)で異なるので。
これでエンターテインメント的な入口からの精神科等のカウンセラーのイメージと異なっている場合に、
PC家電屋の店員とPCプログラマを間違えるような衝撃がある

ほとんどの臨床のカウンセラー(認定心理士、臨床心理士、公認心理師)は統計をガッツリやってない。少人数の質的な事例検討が主。
非臨床の心理学者・研究者はガッツリ統計をやっていて臨床経験なく資格もない場合もある。大人数の量的な統計研究が主。
そしてこの違いに多くの人は気付いてない。

私は心理学研究から医療に移った

ちなみに私は資格もあって研究もしてきたので両方できる。専門は非臨床で統計中心。臨床は病院なので医療寄り。なのでバランス型のパワプロのオールCみたいな感じ

非臨床の統計世界から流されてくるカルピスの原液みたいな飲むと苦しくてむせるような難しい世界を、
いかに薄めてエンターテインメント的になりすぎないギリギリラインでご提供できるかというチキンレースを日々楽しんでおります。

大学のとき心理学部の最初の指導教授が発達心理学で質的研究の事例検討が主(大半これ)だった、そこから量的研究の心理統計やろうと次の指導教授に教わって、更に情報工学部で認知心理学を教わった。この時に心理学と情報工学で、統計学と認知情報学でお互いが棲み分けてしまっていることに気付いた。

心理尺度構成分析と認知情報分析の方法論で、同じ統計学をまたいでいるはずなのにお互いがまるで知らない、見えていないという状況だった。

この世界を見たあとに医療の方に畑を移したけど、特殊症例の質的研究ばかりでOh..となって、まだ薬学疫学の公衆保健衛生の方がしっかりしてると感じて医学部の教授に習っていた