●乳腺炎
うっ滞性乳腺炎と急性化膿性乳腺炎がある。
Ⅰ【概要】
・うっ滞性乳腺炎
うっ滞性乳腺炎は産褥期の比較的早期に乳管内に乳汁がうっ滞した状態。感染によるものではない。
乳管発育が未発達な20歳代前半の初産婦に多く、発症も乳汁分泌がさかんになる産褥2~4日目頃、遅くとも1週間以内である。
【症状】
閉鎖乳管に一致した乳房の腫大,硬結,圧痛,自発痛,熱感、発赤,発熱
【治療】
哺乳を積極的に行い授乳後も搾乳を行う。
乳房・乳頭のマッサージ
疼痛が激しいときは,消炎酵素薬,葛根湯などを授与。
Ⅱ【概要】
・化膿性乳腺炎
化膿性乳腺炎は乳腺や間質組織に細菌感染が生じたもの。産褥2~3週ころに発症することが多い。
起炎菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、レンサ球菌、腸球菌。
【症状】
悪寒戦懐、倦怠感を訴え、38~40℃の発熱。
局所的には乳腺内の疼痛を伴った硬結,発赤,熱感,圧痛などがみとめられる
発熱や悪寒や身体の痛みなどの感冒様症状を伴うことも多い
【治療】
授乳を中止し、抗生物質、消炎酵素薬、解熱鎮痛薬など投与。
膿瘍を形成した場合、切開・排膿を行う
急性期で症状が強い場合は、ベッド上安静とし、冷竃法で局所の熱を下げ安静にする。
授乳に加えて,炎症をおこしている乳房に対して用手による排乳も行う。
看護師はスタンダードプリコーシヨンに準じて洗いを行う。
(備考)
・症状の増悪に影響を与える因子
①乳頭亀裂
②うつ乳
③不潔な操作
④児の口腔内感染
⑤児への直接授乳
⑥局所の安静が保てない(マッサージ,温篭法,搾乳)
母体に及ぼす影響
①授乳中止
②乳腺膿瘍は切開。穿刺による排膿
③膿が排出されても,まれに蜂窩識炎へと拡大することあり
判断ポイント
①乳房の症状観察
②バイタルサインのチェック
③検査データ:ESR著明亢進,白血球数増加,CRP陽性
④乳汁培養
⑤産褥熱との鑑別(一般に発症時期が乳腺炎のほうが遅い)
援助
①乳頭・乳房の清潔を保つ。
②乳房ケア時の手指を石けんと流水でよく洗う。
③乳頭。乳輪のマッサージを妊娠中から行い,皮膚を強くする
④授乳時,乳首から児を離すとき口を開けさせて離す。
⑤乳汁分泌が少ないときや水癌を形成しているときは授乳時間を短くする。
⑥乳頭亀裂やびらんのときは授乳を中止して搾乳する。
⑦亀裂やびらんには軟膏を塗布し,乾燥に努める・
⑧乳汁うっ滞時は基底部のマッサージを行い,搾乳する.
⑨乳房が熱をもっている場合は,アイスノンなどで冷罵法をする。
⑩抗生物質,消炎剤の投与をする。