ゼルダの伝説 Tears Of TheKingdomの考察。
タイトルは[ゼルダの伝説 Tears Of TheKingdom]で「涙の王国」という意味です。
外国人の感想みていると、日本人だと秘宝(神器)が「勾玉(まがたま)」だと分かりますが、過去のゼルダ作品だと「涙」(ムジュラの仮面の「月の涙」など)と表現されてきたので、神器として直線的に繋がってこないのが面白く感じました。
前作のBotWではハイラル信仰の密教として古代シーカーの魔術的なアニミズムをしていました。キリスト教と土着信仰。
今作は「空」(そら)を舞台に、仏教の「空」(くう)の宇宙観を掘り下げています。
- 龍と枯山水~なぜ精神世界が枯山水の世界なのか?~
- 精神世界の枯山水の場所は実在する
- なぜゾナウ文明=龍=カンボジアなのか?
- 旧約聖書のパロディ
- 光の賢者ラウルとミネルヴァのフクロウ
- ハイラル信仰の歴史歴な三構造
- ラウルとミネルの姉弟設定
- ありがちな設定では「光と闇」のゾロアスター教にしがちだが…
- 「神の奇跡vs人間の科学」とやらない作品はすごい
- なぜラウルとミネルだけ「おでこに目」があるのか?
- 神様より人を重視しようとする「第三の目」
- ラウルとミネルの元ネタ
- ソニアの元ネタ
- 最強武器は空也上人の「鹿杖(かせづえ)」
- なぜ空也上人はライネル狩りをしていたのか
- 看板立てカバンダはいずれガノンドルフやハイラル王より支配力を持つ
- 日本神話と北欧神話のシシ神様
- バグ動画を参考に作られている
- 経済特需で平和になって悪化したハイラルの治安
- ゾーラの里の泥の物理演算
- 地底世界の開発コスパの良さ
- やり始めから
- 後日談・110時間ほどで全クリしてコントローラが途中で壊れた
龍と枯山水~なぜ精神世界が枯山水の世界なのか?~
ゲームの中ではいたるところで「枯山水のデザイン」が出てきます。
特によく見るのが祠にある枯山水の「砂紋」の作庭。
丸を重ねた波紋の形です。
この砂紋は「龍」と呼ばれています。
砂と石で「龍」を示すゾナウを暗示しているからです。
古代のゾナウ文明は「龍」を暗示させることで高度に隠していたわけです。
精神世界の枯山水の場所は実在する
ボスを倒すたびに飛ばされる精神世界の「枯山水の庭園」は京都の「大徳寺 龍源院」でしょう。形が一番似ています。
参考
大徳寺 龍源院
BotW(ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド)でもティアキンでも舞台のハイラルは任天堂本社の京都市の縮尺です。
ダンジョン名もすべて京都市内の地名です。
ゾナウの「龍」を枯山水で見立てているのです。
精神世界なのは禅の内観世界です。
龍安寺や大徳寺の枯山水に観られる禅では、その宇宙観を「見立て」として心の世界で再現しています。
なぜゾナウ文明=龍=カンボジアなのか?
ゾナウ遺跡は明らかにアンコールワットのデザインを模しています。
これは古来、日本はカンボジアをインドと勘違いしていたからです。
日本へ仏教伝来した頃(西暦552年)から「お釈迦様が説法したインドの祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)という場所がある。行ってみたいなぁ。」と伝聞され、鎌倉時代の平家物語でも「祇園精舎の鐘の声…」の書き出しは有名です。
ゾナウはカンボジアのアンコールワット遺跡群の東南アジアなイメージを重ねています。
実際に1900年(近代)以前まで日本人はカンボジアのアンコールワットをインドの祇園精舎と勘違いしていました。
京都で枯山水をやってた頃の当時のお坊さんも、江戸時代のお坊さんも武士も「仏教の聖地はカンボジア」でした。
カンボジアが龍伝説の聖地だったのです。
禅の枯山水で「砂紋」で「龍」を表現すると、そのイメージはインドではなく、当時の人にとってもカンボジアのアンコールワットなのです。
旧約聖書のパロディ
「風の神殿」周りが最も力が入っていたと感じます。
旧約聖書のノアの箱舟の艦隊。これを見るためだけにも買ってよかったです。
地上の背景と竜の巣とワンセットであれだけの船のオブジェクトとアニメーションを同時に動かして処理落ちしてないのがすごい。
ヘブラ山の山頂からノアの方舟。
そのまんま旧約聖書です。
その先の先祖と邂逅する精神世界が枯山水庭園なのが、神の創造論とは別の、仏教の空の内的表現として味わい深くて良いです。
(本来は荒ぶる神を沈めたら、契約するのは賢者ではなく神とですが)
そういえば「旧約聖書のヘブラ山で神を鎮める」パロディは2017年のCGアニメ「けものフレンズ」にもありました。
前作の「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」と「けものフレンズ」の時期は2017年で全く同じです。
おそらく構想として先にティアキンを出していたら同じことをやってしまった可能性があります。
光の賢者ラウルとミネルヴァのフクロウ
時のオカリナだと、光の賢者ラウルがフクロウだったのは、フクロウが知恵の象徴であり、イルミナティ(明けの明星)の光だから。理性、理神の賢者。ミネルヴァのフクロウ。
owl of Minerva
https://www.oxfordreference.com/display/10.1093/oi/authority.20110803100258860
賢者ミネルの元ネタは「ミネルヴァのフクロウ」
ゲームやり始める前に書いたけど、まさか本人が登場するとは思いませんでした。
とくにミネルというケモナー賢者。
言ってることは聖人なのに、やってることが狂気のマッドサイエンティストです。
幼少期にミニ四駆やガンプラやメダロットやカスタムロボにハマって、魔法と科学の融合に耐えきれず精神分裂したクチなのでしょう。
ハイラル信仰の歴史歴な三構造
5年前に書きましたが、
・ゾナウ夫婦信仰(ラウルとソニア)
・シーカー道祖神(地蔵、2体で1つ)
・ハイラル女神信仰(ゾナウ・ソニア信仰)
隠れハイラル女神信仰がゾナウ女神信仰だったので、アニミズム神話が土着化して本地垂迹しながら一神教へ巻き上げられていたのです。
ゼルダの伝説BotW(ブレス オブ ザ ワイルド)の世界観を考察する
一貫して見ると、BotWの祠の即身仏が「ハイラルの女神」を崇拝することの違和感が解消されたのです。
これまでは魔術を使うシーカー族がハイラル信仰へミイラ入定するのが意味不明だったから。
「ゾナウのソニア」であれば未来の弥勒菩薩の到来まで衆生救済する意味が分かります。
ラウルとミネルの姉弟設定
ミネルの元ネタであるミネルヴァのフクロウ。
フクロウは知恵の象徴であり、ラウルの太陽神(光の賢者)に対して、イルミナティ(明けの明星)の光。
理性、理神の賢者。作中では魂の賢者。
理神論は科学を司るのでゾナウの科学文明を探求している。
よく練られて設定されています。
大きな文脈で
神話(神)と科学(機械)を、光と闇、神と人、天使と堕天使とやりがちなところ、
ラウルのLawの太陽神(法、神)からの語源を掛けて、
ミネルヴァのフクロウ(理性、人)の語源からラーとバステトの古代神の姉弟設定にしてあるのです。
そのあとに魔王が出てきてもこじれないわけですね。
ありがちな設定では「光と闇」のゾロアスター教にしがちだが…
よくありがちな設定で、
「光は善の主人公サイド」「闇は悪の敵サイド」という分け方があります。
光は善の主人公サイド。
闇を悪のルシファー(堕天使、イルミナティ、明けの明星)の敵サイド。
これはゾロアスター教に由来する分け方です。
しかしそこから派生させて「神の奇跡vs人間の科学」の歴史世界観をやってしまうと古いのです。近代以前です。
「神の奇跡vs人間の科学」とやらない作品はすごい
例えばスマブラやディシディアやキングダムハーツやマーベルなどは「光vs闇」のゾロアスター教の二元論のストーリーを作ります。
カレーから肉じゃがにしたり、肉じゃがからカレーに戻したりするような、そんなストーリーを二度焼き三度焼きしてきます。
これは仕方のないことです。
キャラクターが多くなると、処理しきれなるのですから。
しかし人間のリベラルアーツ視点で見ると、神より人の理性合理を重んじる理神論の理科学となって融和派生したのです。
よって「光vs闇」「神の奇跡vs人間の科学」と設定してしまうと「機械を捨てて、神様の創造した自然の原始生活に還ろう」になりがちで。
歴史的にも学問的にも「話は美しいけど、そんなことしたら生活できないのでは?」とリアルに共感されにくくなってしまうのです。
なぜラウルとミネルだけ「おでこに目」があるのか?
ラウルとミネルだけ能力使用時に「おでこの目」である「第三の目(プロビデンスの目)」が開眼します。
普段は閉じています。
彼らの目は神様が「人」に対して本当の教えを啓蒙(けいもう)するときに開きます。
現実の歴史でも「第三の目(プロビデンスの目)」は中世以降にデザインされました。
摂理(Providence)の意味は、pro(前を)videre(見る)です。
神様は宇宙が誕生したときからすべての人間の宿命を必然的に決めている(予定説)という考えに対して「人の目で見よ」とします。
神様より人を重視しようとする「第三の目」
分かりやすいのは、キリスト教のカトリックとプロテスタントの歴史的な宗派対立です。
中世以前はキリスト教のカトリックの支配する世界でした。
「すべて人間の宿命を必然的に決めている」(予定説)を重視していました。なので「これは神の啓示です」と「もう人間は全部決まっている」「神がすべて」だったのです。
これに対して中世以降にプロテスタントは「いやいや、すべて神の啓示なんておかしい」「カトリック教会の貴族や僧侶が民衆を規制して増税して、言いなりにするために都合のいいこと言ってるだけだ」「神様はそんなこと予定していないでしょ」「人はもう一つの目で摂理(Providence)を見通せ!前を見ろ!」
「神より人を重視せよ!」
これで起こったのがピューリタン革命や、フランス革命などの革命運動。それで出来たのがアメリカ合衆国です。
フランス人権宣言や、アメリカの1ドル札に「プロビデンスの目」はデザインされています。
人を重視する先駆的な組織が「イルミナティ」と呼ばれる自己啓発的な大学のサークル(陰謀論で語られるほど当時は闇の秘密結社ではない)だったので、そのデザインが採用されました。
ラウルとミネルの元ネタ
今回のRaul(ラウル)の名前は古ノルド語の「助言するRao、狼ulf」の男性名です。
風貌から明らかに太陽神law(ラー、ロウ)に掛けてます。ゆえに光の賢者です。
だからミネルもエジプト神話で血縁の「バステト神」のケモノな風貌をしています。
ソニアの元ネタ
ラウルの配偶者のソニアは古代ギリシア語で智慧・叡智を意味する「ソフィア(sophia)」が語源です。
女性名でよく名付けられます。
「技術を使う人」「知恵を受けた人」
神よりも「~を使う”人”」を指す意味で使われます。
学問でも、例えば「哲学」はphilosophy(フィロソフィー)、philo(愛する) -sophy(知恵)と言いますね。
すべての学問で博士になると「Ph.D」とつきますが、このPhが、例えば、理学博士(理学philosophy(フィロソフィー)、医学philosophy(フィロソフィー)という意味です。
その哲学分野の知恵を愛した「人」だからです。
最強武器は空也上人の「鹿杖(かせづえ)」
ゼルダの伝説ティアキンに最強武器群の「白銀ライネル粉砕槍」は空也上人の「鹿杖(かせづえ)」です。
空也は「南無阿弥陀仏」と口から念仏を出したと言われる六波羅蜜寺の開祖です。
空也上人像(海洋堂)
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ゼルダの伝説ティアキン最強武器群の「白銀ライネル粉砕槍」
あの空也上人もスクラビルドして所持していた「鹿杖(かせづえ)」
京都の鞍馬山での修行中。
ハイラルは任天堂本社のある京都市の縮尺ゆえ、ゆかりの品なのです。
なぜ空也上人はライネル狩りをしていたのか
六波羅蜜寺の開祖の空也上人もサバイバルする上で攻撃力高そうな武器も必要だったのでしょう。
空也は平定盛に好きだった鹿を殺され、杖に角をつけて供養しました。
よって鹿杖には回復能力があるとも言われています。
右手には撞木 (しゅもく)を持っている。胸の鉦鼓(しょうこ)を叩いています。
空也上人と同時期の平安時代中期に平定盛と平貞盛という同姓同名の人物がいますが、別人と言われています。
しかし空也が敵対視した平定盛という人物の資料がなさすぎます。
明らかに空也は平家に恨みを持ってたので権力者の平貞盛と名前を掛けてたんじゃないかとすら思います。
看板立てカバンダはいずれガノンドルフやハイラル王より支配力を持つ
看板立てのカバンダのやってるのは所有者不明土地の占有による将来的な所有登記。
彼は将来、不動産王になるでしょう。
天変地異と瘴気汚染でハイラルの地価が暴落。ゼルダ不在を好機にネームバリューあるエノキダを勝手に宣伝して信用拡大。
ハイラル復興後、看板地に不動産を工務店を介して建てるわけです。
81人のカバンダは確実に山や交通の関所で所有登記を狙っているので、ゼルダ帰還後は全種族が彼にルピーを支払って土地を買い取ることになります。
エノキダ建設より、土地の権利売買で不動産王になります。
カバンダはガノンドロフやハイラル王より支配力をもつでしょう。
(参考)
https://game8.jp/zelda-totk/529
不謹慎ながら、災害や戦争で、国と民衆が混乱してるのを好機として一等地の権利を所有していく手法は、昔も今も現実に行われています。
わざと戦争して世銀IMFに貸し剥がし、国際金融資本に支配され、復興予算の国民の税金は所有者の懐へ。要所であれば国は所有者から税金で買わなければならないのです。
そんな悲惨な現実まで教えてくれています。
日本神話と北欧神話のシシ神様
正直、時のオカリナようにラウルはフクロウの方が良かったです。
「シカ」と掛けられて、「シーカー族」の先祖にされてしまったのです。
日本神話でもヨーロッパのギリシャ神話でもケルト神話でも鹿の神、シシ神が出てくる共通項が多すぎて汎用性が高すぎました。
バグ動画を参考に作られている
任天堂ティアキン 前作のBotWでウインドボム移動やマグネキャッチで、意図せぬものを組み合わせてプレイヤーが遊んでるのを見て、スクラビルドやウルトラハンドで吸収昇華したのでしょう。
改造マリオがマリオメーカーで正式発売されたのと似ています。
バグや改造での遊び心こそが原点なのだなぁと。
経済特需で平和になって悪化したハイラルの治安
ゾナウ観光特需でお金にうかれるシーカー族。
ゴロン族にアヘンを配ってハイラル人ヘイトするようになったゴロウヨ。
欲にまみれて治安が悪化している…と感じました。
出会う人みんな何か短気で半ギレの人が多いです。
前作の、共通の敵がいて絶滅を待つ末法の世の世界観のほうがマシだったのではとも感じます。
温厚だったゴロン族にアヘンを配ったことで金と肉に溺れるどころか怠惰になりました。
ハイラル人ヘイトする民族差別の極右化したゴロウヨが跋扈したのが本当にデスマウンテンでした。
ゾーラの里の泥の物理演算
ゾーラの里。ヘドロの「泥」を表現する物理演算はかなり難しいです。多くのCGアニメでは泥表現は避けられがちです。
ペースト状で泥っぽくないな…と思いましたが、空の水の神殿周りで「謎の浮遊力」がある補完的な說明があって「うまいことリアリズムをファンタジーで回避したな…」と感じました。
地底世界の開発コスパの良さ
地底世界。ハイラル世界のLightを全てOFFにして、土台のメッシュを裏返して地下に埋め処理軽減。
同じテクスチャを使い回しても暗いので「使い回しが分かりにくい」(ホラーゲームと同じ要領)のは賢いと感じました。
ホラーをテーマに暗くしたりジェットコースター逆走させたりして低予算で変化させたUSJの経営戦略を思い出しました。
やり始めから
空島から初めてハイラルへ降りたら井戸の前に落ち、そのまま地底世界まで落ちて激ムズ難易度を感じました。
暗黒世界で帰り方が分からず絶望。空島以外の祠を開放していなかったのでマップを開いてもワープで戻れると気付くまで5時間かかりました。
「今作はパラセールなしか…」と思い、何度も天界から川を目指して紐なしバンジーを繰り返し転落。頭部外傷、全身粉砕骨折。
デスマウンテンや水の神殿の手前でいよいよ「さすがにゲーム設計上、難易度高すぎるやろ…」と思いました。
後日談・110時間ほどで全クリしてコントローラが途中で壊れた
110時間ほどで全クリ。途中でSwitchのJoy-Conが2つとも故障して自動で右入力が常態化。リンクは常に右に動きアイテム選べずカメラが回り続け。
なので押しボタンのみでラスボス倒すため武器とハートを上げ続けてゴリ押した。もう満足したので修理に出す。とても良いゲームだった。