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強迫・自己愛・境界性人格障害の二分法思考の違い

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の続きで、自己愛性人格障害者について記載します。

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自己愛性人格障害者とは、自分を”良い部分、悪い部分”で二分法する中で、悪い部分を否認して、良い部分だけで生きていると思っている方々です。

実際に会ってみると、ひどく子どもっぽく、傲慢で、自分は特別な存在と思い込んでおり、周りが便宜を図ったり、賞賛し、自分を特別扱いするのは、当たり前だと考えています。

①自分には世間の人が気付いていない才能や優れた点がある

②大成功して有名になることを夢見ている

③自分には人とは違ったところがあり、特別な人間だと思う

④周囲からの賞賛が何よりも励みになる

⑤多少の無理でも、自分の望むことはたいてい聞いてもらってきた

⑥欲しいものを手に 入れるためなら、他人を利用したり、言いくるめる自信はある

⑦自分勝手で思いやりのないところがある

⑧友人や知人の幸せは、内心、妬ましい

⑨態度が大きい、プライドが高いと思われている

この内、5項目以上に当てはまれば、自己愛性パーソナリティと判断してよいです。
●「自己愛性人格障害の基本的特徴は誇大性・賞賛への要求・共感欠如である。自己の重要性についての誇大感はしばしば高慢で見栄っ張りに見える態度を導く。彼らは他者から賞賛されることを当然と思っており、逆に他者の貢献をしばしば過小評価し価値を切り下げする。」

●「彼らの自己評価はほとんど例外なく脆弱であり他者によくみられらることにこだわり持続的な注目と賞賛を求める。また彼らは他者の願望と主観的体験と感情を認知することが困難で自分だけの関心事について不適当に長々と話す傾向がある」

近藤三男「自己愛性人格障害の発症機制」「精神科治療学」1995年11月号(星和書店)

ウィーンで生まれアメリカに渡った精神分析者のハインツ・コフートは自己愛人格の形成に最も重要なのは幼児期の誇大自己であると言います。

人は生後18ヶ月~30ヶ月に達すると初めて自己イメージを獲得しますが、これは思春期以降に手には入るはずの自己同一性とは違います。

「宇宙は自分ひとりのためにある」「自分の思い通りにならないことはない」という全くひとりよがりの万能な自己イメージです。

コフートはこれを「誇大自己」と呼びました。

子どもにとっては「その誇大自己をいかにうまく傷つけてもらうか」が重要で、普通は自分の思いがかなわなくなった時や自分以外にも子供がいると知ったときに、殻にヒビが入ってそれが割れる頃に思春期が訪れて「仮初(かりそめ)の私」の誇大自己の下にちゃんと適当な自己ができます。

しかし、誇大自己がうまく正常の自己に置き換えられないまま思春期を迎えてしまうことがあります。

コフートはこの原因を幼児期の家庭環境の問題に求めました。

手に入れた誇大自己を傷つけられたとき子どもはその傷に耐えきれずに、今度は親に自分の完全性や万能感を投影することで危機を乗り切ろうとします。

このことは、

『子供の映し返し欲求(親にほめてほしいなど)』

『理想化の欲求(自分の親は素晴らしい)』

と呼ばれています。

ところが、これを親がうまく受け損なう場合があります。

それは「子どもを褒めずに自分の自慢話をする」とか「子どもに賞賛されると機嫌が悪くなる」という態度です。

●「この程度の失敗は普通の育児環境でも容易に起こりうるが問題は親の性格ないしは特定の育児観に基づいてこうした失敗が徹底してしかも慢性的に繰り返される時である」

伊藤洸「自己愛型人格障害の発症機制」「精神科治療学」1995年11月号(星和書店)
こうした事態が続くときのみ「誇大自己に発達停止が起こり幼児的な幼さを温存したまま」自己愛人格が形成されます。
しかしなぜ自己愛性人格者が不安に怯えて苦悩しているのか?というと、

それは、本人自身がその誇大自己が健全なことではなく「私は自己イメージとして幼児の誇大自己を選択せざるを得なかっただけで自ら好んでこれを維持しているわけではない。自分はまだ脆弱な自己しか育っていない」

・・という思いの二重構造が彼らを苛立たせるからです。
●「外殻には尊大で冷たく近寄りがたい孤高の自己がありその内部には弱々しい羞恥心に満ち足り自己、怒り羨望が渦巻いている自己がある。彼らは自己の弱い部分と醜い部分を自覚しているがそれらを露呈してしまうことを恐れて、他者との親密な関係を回避する。(中略)それらは社会的引きこもりと孤立、あるいは共感欠如と対人搾取という用語で表されるような対人関係として現れる。」

伊藤洸「自己愛型人格障害の発症機制」「精神科治療学」1995年11月号(星和書店)
彼らの高慢さや特権意識とは、誇大自己の結果をもたらられる「私はノーベル賞学者になる人物だ」といった楽観的なものではなく、彼らは最後の砦である誇大自己を守るために「わたしは(どんな意味においてでも良いが)特別だ」という意識を常に持ち続けていかなければならないのである。

「平凡な人がうらやましい。でもそうなれない。」という彼らの得意なフレーズはそのことを意味しています。

「私だって特権意識を捨てたい。でもそうしたら誇大自己が破壊されてしまう。それに代わる自己イメージを私は持ち合わせていない」

と彼らは言いたいのかも知れません。

それは「泣きながら「私は特別だ」と永遠に言い続けなければならない」という神話的な物語も連想されます。
自己愛性人格障害者と人間関係の中で付き合おうとすると、現実的な問題処理を行うマネジャー的なパートナーになるようにします。 批判したり、欠点を指摘する時には、絶交を覚悟するくらいの心持ちが必要になります。
その他、参考文献

人に悩みを植え付ける根源である神経症・人格障害者への考察・対処法まとめリンク

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