アート(Art)には、芸術という意味も、技術という意味もあります。
絵画も、彫刻も、造形も、映画も、ドラマも、アニメも、ファッションも、研究論文も、すべて「アート」なのです。
さてそのアート作品を見るときに単純に「好き、嫌い」ではいけません。
どんな点に着目して見たり、作っていけば良いのでしょうか?
簡単に5つあります。
【浄化】心理的に浄化されているか
大切なのは作品が「浄化されているか」ということです。
「浄化」とは「形になっていて救いがあるか」ということです。
典型的な悪い例だと「オレの苦しみをくらえー!」と、エ口グ口バイオレンス丸出しだったり、銃をバンバン撃って爆弾大爆発で「かっちょいいー!」と言うハリウッドアクション映画以下の品のないものです。
これは過去に数多の何人もの人間が典型的にやったことで、それを出すことが特別と考えているところまで典型的なのです。
幼児思考が垣間見えて悲しくなります。
嗜虐的な破壊・破壊シーン自体は別にあっても良いのですが、それに意味がなくてはいけません。
あくまで「形になっていて救いがある」という形になっていることです。
自分の中で解決できていないのに、中途半端に観客に疑問を投つけるような形ではいけません。
【開示】自己開示してどこまで裸になっているか
「浄化されているか」ということは、過去に自分がその問題を克服したことを指します。
自分はこうやって克服したのだ、これが私の強い生き様だというものが自己開示としてないといけません。
たいていその自分の過去の失敗の自己開示は、本人にとって恥ずかしいものです。
しかしそれをあえてやってどこまで裸になっているかというのが大切です。
誰も経験していない新規的なことだからこそ恥ずかしいのであって、その勢いが新規性を作り出します。
【新規】新規的か=知識があるか=歴史の重層性を理解しているか
「新規的か」というのは最重要です。
アート作品は「歴史的にカブってないか」が判断されます。
「カブってないか分かる」ということは、逆を言うと「過去作品を知っている」ということです。
「あー!これ見たことあるー!」ではまずいのです。
新規的ということは、つまり過去の作品の重層性を理解しているということになります。
無理に最新の技術まで取り入れようとまではしなくていいですが、ほんの少しでも変わったオリジナリティがあるかというのが大切です。
【投影】投影・風刺的なメタ的な表現があるか
基本的なことですが作品には作者の心理が投影されます。
同時にそれが登場人物、身内、人間、社会、宇宙と、メタ的に抽象性が上がっていなければ共感を生み出しません。
芸人で言うと、最初に突発的で「新規的なもの」をやり、次に「あるある」ネタが出てきて飽和していきます。
これは抽象度が上がったために「分かる、分かる」という同じ目線の共感が笑いを生むからです。
マルクスの「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として。二度目は喜劇として。」と言われるのはこれが由縁です。
二度目は「分かる、分かる。あるある。」と抽象度が上がるので安心できるのです。
そのために視聴者との対話するように、日常を潜り込ませて「分かる、分かる」と共感できる風刺を盛り込んでいなければいけません。
【感動】情動を揺さぶられるか
感動とは、喜怒哀楽ですが、どこ感情も表現することは簡単です。
最も難しいのは「過去に体験したことのない感動」「新規的な感動」を与えることです。
観客の過去の経験に応じて見え方が変わってくるのが優れた作品です。
いずれかの情動を揺さぶり、新たな感情を再構築させて感動させるのが真の作品です。
そうなったとき喜怒哀楽のどの感情を出していいのか分からないような複雑な思いになるでしょう。
それが真の感動なのです。