ケアの項目 新生児:バイタルサインの測定
ケアの目的 体外生活への適応が順調に進んでいるかの査定と異常の早期発見と危険予測対応のため
使用物品 聴診器、体温計、アルコール綿、超音波血流圧計(ドップラー血圧計)、ナースウォッチ
啼泣した後、運動した後、授乳直後、食事直後、入浴直後は避ける)
・手洗い
・脈拍測定することを説明し(乳幼児の場合は母親に)了解を得る
【手順】
Ⅰ 呼吸
[新生児・乳児の場合]
①安静・保温に注意しなるべく入眠時に測定を開始。
②腹式呼吸であるため、多くの場合腹部を見て測定するか、子供を泣かせないように、軽く腹部に手を当てる。
(乳幼児の呼吸は不規則であるため、原則として完全に1分間の呼吸数を測定する)
③胸部に聴診器をあて、呼吸音の性状、肺野への空気の入り方などに観察。
(冷たいままの聴診器を小児の胸部にあてると、小児は驚いて呼吸音に影響を及ぼすため、看護師の手であたためておくとよい)
④記録
(月日、時間、1分間の呼吸数、呼吸の深さ・リズム・型、随伴症状等)
Ⅱ 脈拍・心拍
[新生児・乳児]
橈骨動脈等の触知が困難なため、心拍の聴診を行う。(乳幼児の場合、啼泣により脈◯触診心音法拍が変動するので注意する。聴診器は手で温めてから使う)
①聴診器を心尖部にあて、心拍数を測定し、リズム不整の有無を聴取する。
②心拍のリズム不整の有無、拍動の強さ、心雑音の有無等を観察。
Ⅲ 体温
体温計に破損はないか、消毒済みであるか、水銀柱の場合は水銀柱に切れがないか、体温計の水銀柱は35℃に下がっているか
[新生児・乳児]
直腸検温を行う
①新生児・乳児を側臥位にしておむつをはずし、体温計の先に、潤滑油をつける。
②体温計を肛門部から、新生児では1~1.5cm、乳幼児では2~3cm、ゆっくり入れる。
③測定中、小児が動くと粘膜を傷つけてしまうことがあり危険なので、体温計はしっかり固定。
④測定が終了したら、体温計を抜き取り、測定値を読む。
⑤肛門周囲を軽く清拭し、おむつをあて、衣類を整える。
⑥片付け(アルコール綿消毒)
⑦記録する
(月日、時間、測定値、自覚症状・随伴症状などの観察内容)
Ⅳ 血圧
マンシェットのゴムのうはスムーズにふくらみ空気漏れがないか、血圧計の水銀柱の切れがないか、水銀コックを開いたとき水銀が0点にあるか、送気球のネジの開閉はスムーズか、マンシェットの幅は適切か。
①児を仰臥位にし、測定する側の上肢を心臓の高さにする
②測定側の衣服の袖を肩のあたりまでたくし挙げ、手掌を上に向ける
③マンシェットを取り出し、ゴムのう内に空気が入っていないこと、マンシェットの幅が適切なことを再確認
④マンシェットのゴムのうの中央が上腕動脈の真上に、マンシェットの下縁が肘窩の2~3cm上になるようにし、皮膚に沿わせるようにマンシェットを巻く
⑤血圧計の水銀の水銀コックを開いてONにし、送気球のネジが開いていることを確認する
⑥触診法か聴診法、ドップラー法により血圧測定する
[新生児・乳児]
●ドップラー法
(1)マンシェットを巻いたら、血圧計を小児の心臓の高さにおく。
(2)超音波血流血圧計のプローブに専用のゼリーをつけて、上腕で測定する場合は上腕動脈、下腿で測定する場合は足背動脈あるいは後脛骨動脈にあて、血流音を確認し、マンシェットを加圧する。
(3)年齢別の正常値あるいはそれぞれの小児の通常の収縮期圧より、15~20mmHg上まで加圧する。必要以上に加圧すると、しめつけが強くなり、痛みを伴うのでちゅういする。また、出血傾向のある小児の場合も注意が必要である。
(4)加圧ねじをゆるめて、2~3mmHg/秒の早さで徐々に減圧する。急激に加圧ねじをゆるめると、測定値が不正確になるので注意する。
(5)減圧しながら、最初に血流音が聞かれた点(収縮期圧)を読む。拡張期圧は測定できない。
⑦血圧上昇や下降がみられた場合それに関する自覚症状、他覚症状がないか観察する
⑧測定終了。衣服や掛け物を整える。
根拠・留意点(事前学習)
侵襲の少ないものから測る
啼泣、運動、授乳、食事、入浴、精神状態により呼吸は変動する
感染予防のため
呼吸
胸式呼吸で、回数は1分間に40~60回と多いもの浅く不規則である。日齢が進むにつれ、規則的な腹式呼吸となり、呼吸数も減少してくるが、それでも1分間に30回以上の多呼吸。
新生児:40-50回/分
乳児:30-40回/分
呼吸が微弱で測定しにくい場合の工夫として、薄い紙片またはガーゼの抜き糸、羽毛などを外鼻孔から5~10mm離れた位置において、呼吸による動きは1分間測定する。
努力様呼吸のある場合は、それに伴う症状⇒咳・痰・喘鳴・胸痛・冷汗・チアノーゼの有無、呼吸困難の程度等、についても観察・記録
脈拍
出生直後は150回~180回/分と頻脈で、かつ不安定であり、啼泣や体動により変動する。
24時間後には130~140/分となる。
新生児:120-140回/分
乳児:120-130回/分
新生児の場合、収縮期に始まり一致して聴取されるⅠ音と、拡張期に始まり一致して聴取されるⅡ音がほぼ同じ強さで聴取される。
Ⅰ音・Ⅱ音で1心拍であるので測定時は注意する。直接胸部に聴診器をあてるため、あらかじめ手であたためておくとよい。心拍数のみの測定では、肌着など薄手の衣類をつけている場合は、衣類上から聴取できる。
体温
新生児は温熱中枢が未熟であるために体温は変動しやすい。出生直後には直腸温で38℃前後を示すが、身体の冷却、肺や皮膚からの体温の発散により、数時間以内に36℃前後となる。
腋窩温:36.5-37.5℃
直腸温:腋窩温より0.5~1℃高い
口腔温:腋窩温より0.4~0.5℃高い
測定中、刺激により排尿・排便をすることがあるので、おむつを軽くあてておくとよい。両足はしっかり固定し、股関節の脱臼に注意する
血圧
新生児では、左心室が未熟で収縮期圧(最高血圧)が低く、血圧は低い。成長にしたかって左心室と心臓自体の大きさが増大し、血液は上昇する。
通常、上下の収縮期圧(最高血圧)は、上肢に比べて10~20mmHg高い。
新生児:60-80/50mmHg
乳児:80-90/60mmHg
仰臥位が望ましいが、やむを得ない場合は座位で行う(年少児は母親の膝の上で抱っこして行うと落ち着いてできる)
長袖のシャツや袖口の細い場合は片腕を脱がせ、薄手の衣類の場合はその上からマンシェットを巻いてもよい
巻き終わった時の圧迫状態はマンシェットと腕の間に指1~2本入る程度にする
[新生児・乳児]
触診法やドップラー法が適している。
[幼児・学童]
主に聴診法で測定する。
触診法は聴診法より10mmHgほど低い値になる