【概要】
血液型不適合妊娠(母児血液型不適合妊娠)とは、母親と胎児の血液型が異なるだけでなく母親に胎児の赤血球に対する抗体ができた場合。
血液型不適合妊娠には、ABO式血液型不適合妊娠(母親がO型で胎児がA型かB型の場合)と、Rh式血液型不適合妊娠がある。
しかし新生児に重症の黄疸が生じることはまれなので特別な対応は必要ない。
ABO式血液型不適合妊娠よりも、Rh式血液型不適合妊娠のほうが、新生児に重症の黄疸が生じるが、光線療法の普及により、Rh式血液型不適合妊娠で新生児が重症の黄疸になることは少なくなった。
【原因・機序】
●Rh式血液型不適合妊娠
母親の血液型がRh(-)。父親の血液型がRh(+)のときRh式血液型不適合妊娠。
胎児の血液型がRh(+)の場合に、新生児溶血性黄疸が起こる可能性がある。
●新生児溶血性黄疸の機序
Rh(-)の女性が初めて妊娠し、分娩時にRh(+)の胎児の血液が母体内へ侵入すると、母体にRh(+)の血球に対する抗体が作られる。このときの新生児には、強い黄疸が出ることはほとんどない。
しかし、Rh(+)の第2子を妊娠した場合、母体の中にできた抗体が胎盤と臍帯を通して胎児に移行し、それが胎児の赤血球を破壊する。
胎児は貧血になり、出産後にビリルビンという物質が血液中に増加して、新生児に黄疸が出る。
これがRh式血液型不適合妊娠による新生児溶血性黄疸である。
Rh式血液型不適合妊娠では、黄疸が第1子の妊娠のときよりも第2子以降の妊娠のときに起こりやすくなる。妊娠回数が増加するたびに黄疸の度合いが強くなる。
血液型がRh(-)の女性は何回目の妊娠なのか(流産や中絶を含めて)、正確に医師に申告する必要がある。
【検査と治療】
●検査法と治療法
採血で調べることができる。予防法として、出産後72時間以内に抗体がつくられるのを予防する注射(抗Dヒト免疫γ(ガンマ)グロブリン)を行なう。
妊娠中に胎児が溶血性黄疸にかかると、重症のときには胎児が極度の貧血になり、死亡することがある。
治療として、早期に出産させて交換輸血を行なうか、あるいは子宮内胎児輸血を行なう。
子宮内胎児輸血には、超音波ガイド下に胎児の腹腔内に母体側の抗体によって溶血されないRh(-)の濃厚赤血球を注入する胎児腹腔内輸血法、直接胎児の血管内に輸血する胎児血管内輸血法の2つがある。