手術業務は自分から断頭台への階段を上がるようなもの~どこまで自動化可能か~

医学

手術業務をしていて感じるのは「断頭台への階段を上がっている」という感覚だ。

業務中は綱渡りをしているような感覚がある。
日々成長している自分を感じることもできるが「断頭台への階段を上がっている」という感覚がある。

どういうことかというと・・

要するに自分が成長してできることが増えてくる。
一定に安心安全に施行することができるようになる。ここまではいい。
しかし相対的にリスクだけが増してくるのだ。

際限なく難易度の高い手術が要求されるので油断できず、リスクだけが増す。
この感覚が、手術は自分から断頭台への階段を上がるようなものになる。
長期のハイリスクローリターンすぎる。

腕が上がって自信もついて役職も上がったとしても、一度のミスでリセットされてどん底まで引きずり下ろされる。
今までおだてきた医師や看護師の仲間も一瞬で手のひら返す。
「それは医師にとっても同じ。」だとある医師の仲間が話してくれた。
一度外科に長いこといるとその手術技術だけしかつかず、転職したくても潰しが利かなくなる。患者にも頼まれて良かれと思ってやっても裏切られて砂を噛む思いをすることが多すぎる。

初級レベルの手術をこなしているうちはローリスクローリターンでまだ良いが、長期勤めると中級者以上への技術向上のためにリスクが増し過ぎる。
ミスに対するフォローがあればいいが、上に上がっても一度のミスでどん底まで落とされる。

同僚に「トキさんは今、コンビニ人間みたいになってる」と指摘された。

芥川賞小説のコンビニ人間を読んだことなかったが、
概要を聞いてその時は「アルベール・カミュの異邦人みたいだね」と返した。今調べたら本当に作者がファンだったようだ。

手術は機械化した方が良い

これも医師仲間と話していたことだが、手術は本当に完全機械化したほうがいい。

患者からしたら「えー」と思うかもしれないが、
人間はいつも同じコンディションで手術できるわけではない。時に気分や雰囲気でミスを犯したりする。

ハイリスクローリターンすぎて施術する側も割に合わない。

嫌が上にも事故が起こって「技術の継承」が数年で途絶えていく。

ヒトの臓器も想像以上に個性がありすぎる。顔面くらいの多種多様さがある。

内臓に基本形など存在せず、この世の全員が奇形だと思ったほどだ。

だからこそ人間が技術と経験で対応しなければという論理は分かるが、人間故にいつも同じコンディションで出来るわけもなく再現性が低すぎる。

臓器ビッグデータを複合的に組み合わせて立体化させ、ディープラーニングAIで自動手術してくれればいい。

なぜ手術は信心深くさせるのか?

自分がいくら自信があっても、思いがけずミスは起こるのだ。

医師でもミスや事故を同僚や上司部下や友達と慰めあい、懺悔できる相手がいれば良い。

しかし地位を上り詰めると恥を晒して懺悔できる相手がいなくなる。
これは病院に限らず、どの組織でもそうかもしれない。

よって神仏に一時的に丸投げして懺悔するしかなくなる。

結果、信心深くなる。

それは私もそうだった。祈る時間が増えた。

手術で自動機械化可能なもの

一番手術で自動化可能なのは麻酔。
例えば、病棟でもシリンジポンプや輸液ポンプは自動で薬剤管理している。
それと同じで基本的な麻酔コンボ(手順)は決まっているので、機械化すれば最小限のコストで可能。
基本データと既往だけで簡単に基本的な麻酔のレシピができる。

もう一つ手術で自動化可能なのは器械出し。

これもコンボが決まっている。
わざわざ医師や看護師がやる方がミスが大きい。

自動販売機と同じようにオーダー通りにでてくればそれでいいので、オートクレーブ滅菌可能な「器械出し機械」があればそれでいい。

手術でもいきなり全部を自動化することは無理かもしれないが、虫垂、ヘルニア、胆嚢、脳硬膜下出血、ワイヤリング・ピンニング、γネイル、抜釘、腎、膀胱、心尿カテ、CV、腸、胃程度の初心者〜中級者向けなら可能だろう。

先日、麻酔機の点検があった。
解体されている巨大な麻酔機の中を見たのだが、ノートPCよりも小さいマザーボードの基盤が入っていただけ。しょぼすぎた。麻酔と呼吸管理する程度ならこれくらいなのか。

手術の難易度の順と病院の利益

心>肝>肺>膵>脳>胃>腸>骨>腎>乳>目耳>歯>皮

…の順で手術の難易度とリスクになるのではないかと思う。

部位と経過によっても大きく前後するが。

逆に病院として短時間かつ利益を出そうとと考えるならこの順が逆になる。

つまり皮膚科や歯科や耳鼻科で短時間で回し続ければ利益としては最大化する。
インプラントなどの保険診療以外の自由診療が加わるものであれば、保険が効かず実費になるので病院の利益にはなる。

例えが悪いかもしれないが、心臓の手術がフランス料理。皮膚科の手術がラーメン。
フランス料理は時間がかかる上に価格も高い。リスクは高い。
ラーメンは時間はかからず価格は安い。リスクは低い。

フランス料理1回につき、ラーメン4回食べればもとが取れてしまうのだ。

悲しくも日本の医療は競争にさらされて、ラーメンのようなリスクを避けて早い安いに転じていくだろう。
結果生じるのは、重篤な疾患ほど高額になるので医療が受けられないという問題である。

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