【概要】
児頭骨盤不均衡(Cephalopelvic disproportion:CPD)とは、物理的に母体の骨盤を児頭が通過することが不可能なこと。
可能性が高くなる因子として
・母体身長が150センチ以下、特に145センチ以下。
・子宮底長が36センチ以上、特に38センチ以上で巨大児が疑われる。
・超音波検査で児頭の横幅(BPD)が10センチ以上。
・子宮が著名に腹壁から突出している(尖腹)場合。
・以前の分娩が吸引分娩や鉗子分娩などの難産だった場合。
・初産婦で37週以降、児頭の下降が見られない。Seitz法(+)もしくは(+・-)の場合。
・十分な陣痛があっても(有効陣痛)分娩の進行が1~2時間、全く進行していない場合。
・全開大となっても内診をすると児頭が容易に押し戻される場合。
胎児の体重が4000gでも、母体の骨盤の大きさが十分にあれば経膣分娩は可能である。
3000グラムくらいでも母体の骨盤が小さければ難産となることもある。
単純に母体の体格や骨盤の大きさだけで決められるものではなく、胎児(胎児の頭=児頭)と骨盤の相対的な大きさを評価する必要がある。
(備考)
・骨盤骨の変形や硬度の低身長により絶対的に通過が不可能なときは「狭骨盤」と診断する。
・明らかな巨大児や巨大な水頭症などはそれらの診断名を優先すべきである。
・胎児の回旋異常や微弱陣痛は除外すべきである。
・扁平仙骨(本来は丸くカーブしているべき仙骨が生まれつきまっすぐな状態)なども含めない。
【検査】
●CPDの疑う所見ではSeitz法(ザイツ法)が用いられる。(プラス)もしくは(プラス・マイナス)という項目で評価する。
妊娠37週以降に母体に仰臥位に、腹壁から恥骨結合と児頭の位置関係を触診で観察。
通常、腹壁を介して児頭を軽く圧迫することで児頭を母体の恥骨結合面よりも下に触れることができる。
この検査で、恥骨結合面と同じかそれ以上で児頭が骨盤の中へ入り込んでゆかない場合をプラスとプラスマイナスで評価する。
●エックス線骨盤測定がある。
グスマン法(側面撮影法)とマルチウス法(入口面撮影法)の2種類と超音波検査を組み合わせて評価する。骨盤骨は立体的な構造をしているので2方向からエックス線を撮影し評価する。
その大きさから骨盤の大きさを狭骨盤、比較的狭骨盤、正常骨盤の3つに分ける。
【診断】
CPDの分娩では、子宮口が全開大、破水後、有効陣痛があるにもかかわらず2時間ほど完全に分娩が停止しているとき等はCPDとして帝王切開術を選択する可能性が高くなる。