小児の採血

採血部位は、一般に肘静脈を使用する。しかし新生児や乳児では血管が細く十分な採血量が得られないことも多い。また皮下脂肪が多く静脈の露出が十分でない場合もあるため、採血量が多いときには、外頸静脈や大腿静脈を利用して採血することも多い。
未熟児、新生児では、足底内側部、踵部の毛細血管を利用する場合もある。動脈血を採取する場合は、橈骨動脈や大腿動脈を使用する。
●静脈血
①肘正中静脈・・・肩関節と手関節を固定する。
②大腿静脈・・・両下肢を開排位にして、膝関節と腰部を固定する。
③外頚静脈・・・頸部を進展させるように、頭と肩を固定する。
④踵部(新生児、乳児)・・・膝関節、腰部を固定する。
●動脈血
①橈骨動脈・・・肩関節と手関節を固定する。
②大腿動脈・・・両下肢を開排位にして、膝関節と腰部を固定する。
固定をうまく行なうと、早く採血することができる。

(備考詳細)
●静脈血採血

【目的】
静脈血を採取し、血液の成分や性状を検査することにより、全身の各組織や細胞の変化、機能異常などの診断および、治療効果の判定の指標を得る。

【必要物品】
注射針(21~23Gまたは翼状針)、シリンジ(5mℓまたは10mℓ用)、トレイ、検体容器、駆血帯、肘まくら、アルコール綿またはマスキン綿、テープ、絆創膏、検体ラベル(必要時:好みのおもちゃなど)

【穿刺部位】
①肘正中静脈・・・肩関節と手関節を固定する。
②大腿静脈・・・両下肢を開排位にして、膝関節と腰部を固定する。
③外頚静脈・・・頸部を進展させるように、頭と肩を固定する。
④踵部(新生児、乳児)・・・膝関節、腰部を固定する。

【実施】
(1)小児に関する情報収集。
(出血傾向の有無や全身状態など、小児の疾患に関する情報、駆血帯がラテックス製の場合はラテックスアレルギーの有無を確認する。小児の採血の理解、これまでの採血体験の有無、採血時の様子、痛みに対する対処行動を把握する)
(2)必要物品を準備する
(検査内容によって、採血量や検体容器、検体の取り扱いが異なるので、事前に確認しておく。小児の氏名、検査内容、検体容器を確認し、検体容器にラベルをはる。穿刺に用いる注射針は、穿刺部位や小児の体動による固定のしやすさなどから選択する。翼状針は、針が短く穿刺前後の固定がしやすいため、年少児でも有用である)

(3)小児に採血を行うことを説明する(家族には前もって検査の目的や時間を話しておく)
(説明のポイント⇒・採血の方法、泣いてもよいが採血部位だけは動かさないようにすること、必要時抑制すること、必要時採血の理由)→何も告げずに行うことは児と医療者の信頼関係を築くうえでマイナスとなる
(4)小児に排尿させ、処置室につれてくる
(小児の好きな人形、音楽のテープやCDなどを持っていくなど、小児の対処方法を把握し対応する。やむを得ない場合を除き、採血は極力処置室で行う)
→痛みの刺激で失禁する可能性がある。
→小児のプライバシー保持や他児への影響も考える。また、児にとって生活の場でもあり、安心できる場所である病室を怖い場所にしてしまう恐れがある
(5)小児を軽く固定し、穿刺する血管を選択する。このときも気をまぎらわせるとよい。
〔乳幼児の場合〕:小児を処置台に寝かせ介助者に小児を固定してもらう。採血部位の3~4cmの心臓側に駆血帯を巻き、血管をうっ血、怒張させ、静脈を触知する。肘部静脈が用いられるが、わかりにくい場合は、ほかの部位についても同様に行い、触知できる静脈を選択する。血管が出にくい場合は、温罨法を行ったり、末梢側から心臓に向かって、軽くマッサージを行うとよい。

a.乳児

b.幼児
〔年長幼児、学童以上の場合〕:ほとんどの小児が座位で、採血することができる。多くの場合、肘部静脈が用いられる。穿刺部位の選択は、出来るだけ小児の希望を取り入れる。

(6)介助者は、穿刺部位に合わせて小児の固定を行う
(穿刺する部位の、上下2つ以上の関節を固定する。たとえば前腕正中静脈を使用する場合には、肩関節と手関節を固定する。年少児で、激しく動いてしまう場合は看護師自身の体幹と上腕を用いて、小児の体幹を固定する。この場合、穿刺部位が十分に露出できるようにし、さらに、小児の顔色や呼吸状態が観察できるように注意する。年長児でも、穿刺時に動いてしまうことがあるので、軽く手を添えると良い)
(7)駆血をし、穿刺部位の消毒を行う(再度、穿刺する静脈を触知して確認する。駆血帯を強く巻きすぎたり、2分以上駆血を続けない)→動脈血の流れまで抑制してしまうので注意する。
(8)穿刺することを小児に伝え、針を刺入し、採血を行う
(針の切面を上側にし、穿刺部位の皮膚を軽く伸展させ、15~30度の角度で、皮膚に針を刺入する。穿刺部位の上側で静脈を確認しながら、目的の方向に針を進める。針先が静脈に刺入され、針基や翼状針のカテーテル内に血液が逆流してきたら、シリンジや翼状針をしっかりと固定する。ゆっくりとシリンジを引き、陰圧をかけ、必要量の採血を行う)
→陰圧をかけすぎると、血管が虚脱し血液の流出が悪くなったり、溶血を起こす

a.シリンジを接続する場合

b.翼状針を用いる場合

(9)抜針し、出血を行う(必要量の採血終了後、駆血帯をはずし、穿刺部位にアルコール綿をあて、針をゆっくり抜き、完全に抜針したらただちに穿刺部を圧迫する。確実に止血されるまで、3分以上圧迫する)
→止血が不十分だと、皮下出血をおこすことがある
(10)採取した血液を、検体容器に注入する。抗凝固剤のはいった検体容器の場合、血液注入後、ゆっくりと十分に混和させる。検査に提出する。
(11)衣服を整え、患児が頑張ったことをほめ、家族にも伝える。

※穿刺時の抑制方法
・肘窩部:肘関節の上下2箇所の関節(肩・手首)を固定する。反対側の腕ごと体幹をタオルでくるんで全身を抑制する。
・手背:実施者の示指・母指で、患児の手首と指を固定する。反対側の腕ごと体幹をタオルでくるんで全身を抑制する。

●動脈血採血

【目的】
動脈血を採取し、動脈血ガス分析や血液培養を行う。

【必要物品】
注射針(22~25G)、シリンジ(1mℓまたは2.5mℓ)、滅菌ガーゼ、乾綿球、消毒液(アルコール綿またはイソジン)、検体容器、血液ガス分析キット、圧迫固定用テープ

【穿刺部位】
①橈骨動脈・・・肩関節と手関節を固定する。
②大腿動脈・・・両下肢を開排位にして、膝関節と腰部を固定する。

【実施】
(1)小児に関する情報収集
(出血傾向の有無や全身状態など、小児の疾患に関する情報、駆血帯がラテックス製の場合はラテックスアレルギーの有無を確認する。小児の採血の理解、これまでの採血体験の有無、採血時の様子、痛みに対する対処行動を把握する。特に、バイタルサイン、呼吸状態、酸素飽和度などの小児の全身状態に関する情報を得る)
(2)必要物品を準備
(検査内容によって、採血量や検体容器、検体の取り扱いが異なるので、事前に確認しておく。小児の氏名、検査内容、検体容器を確認し、検体容器にラベルをはる。穿刺に用いる注射針は、穿刺部位や小児の体動による固定のしやすさなどから選択する。翼状針は、針が短く穿刺前後の固定がしやすいため、年少児でも有用である)
→太い注射針を選択すると、採血後に血腫をおこすことがあるので、細い針を選択。
(3)小児の発達段階や理解力に応じて、採血の必要性を説明し、協力を促すとともに、不安や緊張緩和。
(動脈血ガス分析の場合、低酸素状態であることや検査結果に影響が生じるので、長時間泣かせないようにする必要がある)
(4)小児を軽く固定し、穿刺する血管を選択する。
(5)穿刺部位を消毒。
(培養検査では、穿刺部位を確認するための実施者の示指や中指も同様に消毒する)
(6)介助者は、穿刺部位に合わせて、小児の固定を行う
(動脈穿刺は静脈血採血よりも深く、危険を伴うので、穿刺中は関節が動いてしまわないように、確実に固定を行う。動脈穿刺は、拍動を確認しながら実施するので、強く圧迫することで拍動を消さないように注意する。培養検査では、穿刺部位を汚染しないように注意して固定をする。固定中も、小児の表情が確認できるようにする)
(7)動脈の走行を、拍動を触知しながら確認。
(8)穿刺をし、採血を行う。
(9)抜針後、乾綿球あるいは滅菌ガーゼを用いて圧迫止血を行う。
(必要時、テープを用いて固定を行う)
(10)採取した血液を、検体容器に注入する
(動脈血ガス分析がある場合、確実に空気を抜き、ゴム栓をして早急に提出する)
(11)小児の全体状態、止血状態を確認する。採血時に激しく啼泣した場合などは、採血後に、バイタルサイン、酸素飽和度を確認する。

●毛細血管採血

【目的】
(1)新生児を対象とし、血算、電解質、血糖検査などを行う。
(2)迅速に血糖値やケトン体を調べる際に必要な少量の血液を採取する。

【必要物品】
ランセット、23G注射針、アルコール綿、ガーゼまたは乾綿球、検体容器(キュピラリーチューブ)(必要時:温タオル、血糖測定器、ケトン体測定器)

【穿刺部位】
・新生児:足底内側部や踵部
・血糖・ケトン体測定:手指第一関節上部の側部

【実施】
(1)小児に関する情報収集を行う
(血糖・ケトン体測定では、食事時間、嘔吐や下痢の有無を確認する)
(2)必要物品を準備する
(3)小児の発達段階や理解力に応じて、採血の必要性を説明して協力を促す。→不安や緊張の緩和をはかる
(4)必要時、穿刺する部位を温罨法する。(5~10分、蒸しタオルなどで温めるとよい)→血液の循環がよくなり採血が容易となる
(5)穿刺部位を軽く固定し、穿刺部位を消毒する。
(6)小児を固定し、穿刺する(足底部を穿刺する場合、片手で小児の踵部分を握り、しっかりと固定する。ランセットまたは注射針を穿刺部位の皮膚に垂直にあて、鋭く穿刺する。このとき、2.4mm以下の深さで穿刺する)→穿刺が踵骨まで達すると、骨髄炎を起こす可能性がある
(7)流出した最初の1滴は滅菌ガーゼで拭き取り、溢血した血液を毛細管の端から吸い取るようにして検体容器に入れる
(キャピラリーチューブの端を血液流出部にあて、自然の流れにまかせて、血液を採取する)→しぼると血液中に組織液が混入し、検査結果に影響が出る
(8)採血終了後、滅菌ガーゼや乾綿球を用いて、圧迫を行う。
(9)検体を早急に提出し、必要な検査を実施する。血糖値・血中ケトン体検査がある場合は、ただちに実施し、結果を医師に報告する。(濾紙にキャピラリーチューブをあててしみこませ、検査に提出する際は、必ず乾燥させてから所定の袋に入れる。)

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