【概要】
小児で発症が最も多い病気。乳幼児期に発症。

【原因】
腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)の開存が原因。これがヘルニア嚢(のう)となり、なかに腸管、卵巣などが脱出(脱腸)する。
正常発生の男児では胎生期精巣下降に伴い腹膜が精巣を取り囲み、精巣固有鞘膜(こゆうしょうまく)となる。その後、腹膜鞘状突起はなくなり、腹腔との連続が絶たれます。多くの場合は出生までに閉じられる。
女児では子宮円靭帯(じんたい)が恥骨(ちこつ)に固定される際に腹膜鞘状突起が引き下ろされる。
男児に多く、小児の約5%に発症。

【症状】
鼠径部が腫大。遺伝性がある。
乳児期の初発症状としては浅い眠り、いらだち、不機嫌。
年長児は陰嚢、鼠径部の痛みを訴えることが多い。

【検査と診断】
基本的には、鼠径部の膨隆が認められ、圧迫により還納し、シルク・サイン(ヘルニア嚢があればこすると絹布ずれ様の感触がある)が認められれば確定診断。
膨隆がない場合は下腹部を圧迫あるいは立位にして鼠径部に膨隆(パンピング・サイン)が認められれば診断。

【治療】
全身麻酔下で手術。手術時間は約15〜20分間。ヘルニア嚢を高位で二重結紮(けっさつ)して切除。保存的治療は行わない。
発症が三ヶ月以下では、手術待機中にヘルニア嵌頓(かんとん:腸管がヘルニア嚢内に陥入、腸管血行障害。放置すると壊死)を起こしやすいので注意。合併症がなければ予後は良好。