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初音ミク氏こそ物理空間と情報空間の中間存在のリバータリアンである

クールジャパン(Cool Japan)という言葉をよく耳にします。

これは経済産業省が主導で企画推進していることです。クールジャパンとは、具体的に、ゲーム・漫画・アニメや、J-POP・アイドルなどのポップカルチャー、それ以外にも自動車・オートバイ・電気機器などの日本製品、料理・武道などの伝統文化など、日本に関するあらゆる事物を対象として呼称します。

元は1990年代に、イギリスのトニー・ブレア政権が推し進めたクール・ブリタニアが語源です。

クール・○○はあくまでキャッチフレーズで、正確には国家戦略における政治経済学の用語で「ソフト・パワーと言います。

ソフト・パワー(Soft Power)とは、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことです。

対して、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力の伴うハード・パワーと定義されています。

この言葉は、アメリカ国際政治家で知日派のジョセフ・ナイ(ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア(Joseph Samuel Nye))が提唱しました。↓

ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力:ジョセフ・S・ナイ (著), 山岡 洋一 (翻訳)

要するに、軍事や経済だけで強制的に支配せずに、音楽や娯楽など文化的な価値観から導入して、ソフトパワー・ハードパワーともに相互作用を利用していこうとする戦略です。

世界大戦に代表される20世紀までが軍事と経済だけの外側からの強制的な支配であったのに対し、グローバル化の進む21世紀からはもっとナイーブに他国の内側から支配していこうと考えたのです。

メリットとしてお互いに理解を深めるという点で、面と向かったガチンコ勝負ではなく、パワーが抽象化されているので平和的な側面があります。

しかしそれは「ソフトパワーだけの場合」で、ジョセフ・ナイも言っている通り「ハードパワーとの相互作用」なのです。

なので構造的には、昔からの白人の侵略の常套手段である「宣教師→商人→軍隊の順に攻めてくる」という仕組みの上位互換のようなものです。

カトリックの宣教師と商人、軍隊、宣教師がキリスト教の布教活動という文化の輸出を行います。
その後、宣教師と共に商人が現れ、通商航路を開きます。そして、その商人を守るために軍が警備をし、最後はその国と小さな小競り合いから軍事衝突、土地の割譲、占領へと向かうのです。
昔から植民地支配の常套手段でした。

室町・安土桃山時代の日本で言うと、織田信長の時代にイエズス会が親しげに交易をしていましたが、次の豊臣秀吉の時代になるとイエズス会の侵略の真意を察してキリスト教禁教令やバテレン追放令が出ています。(日本を侵略する意図があったことは、当時のオランダの書簡にもはっきりと書かれています。)

最近の日本で言うと「韓流」と称して、流行ってもいないような韓国のアイドルグループをマスメディアで大々的に取り上げて、実際に日本でブームを作り上げています。
これは韓国のソフト・パワーと思っている人が多いですが、正確にはアメリカです。
特にアメリカのお膝元のテレビ局であるNHKとフジテレビの兄弟が主導となってやっています。韓国に投資しているのがアメリカだからです。
(サムスンに代表されるような韓国の大手企業の株主は半分以上が外国人投株主です。1997年にデフォルト危機からIMFの管理下にされて外国資本が流れ込み、主にアメリカを中心とした株主資本国家になりました。)

昭和の日本だと「アメリカンドリーム」で、「野球」「プロレス」「ボクシング」「核兵器平和利用=原発平和利用」(※1)などが挙げられます。

日本だと、1950年~1954年に手塚治虫の「平和の原子力ロボット」こと「鉄腕アトム」
全く同時期に、水爆で放射能で死んだ(本当の死因は別ですが)と言われた第五福竜丸事件を受けて誕生した「放射能怪獣」こと円谷プロの「ゴジラ」
この時代の作品には「原子力は万能の力」「核兵器の平和利用を」「放射能は万能に効く」という、今考えれば特に根拠はありませんが、そういった表現が目立ちます。

そして梶原一騎の「巨人の星」の「野球」「タイガーマスク」の「プロレス」「あしたのジョー」の「ボクシング」
すべてアメリカ発祥の文化・スポーツです。
それに加えて「土曜洋画劇場」「日曜洋画劇場」などの「洋画」。この世代の人には馴染み深いものばかりです。
「アメリカ横断ウルトラクイズ」も米国商務省観光局が公式スポンサーでガッチリ支援していました。(EDクレジットに毎回しっかりでてます)

当時は、日本とアメリカが世界経済の中心だったので、利害一致で当然のなりゆきであり、このことに関して善も悪もないと思いますが、「ソフト・パワー」であったことは間違いないです。

ここ(↓)でも書きましたが、音楽など文化には善も悪もありません。そして「自然発生的」ではくては「国境はない」なんて言えないのです。

「音楽に国境はない」のルーツと語源
https://libpsy.com/music-has-no-borders/896

ただし、国家主導での「韓流」や、官僚主導での「クールジャパン」など、自由な社会において国家がソフト・パワーを管理することがあってはならないと思います。

このことはジョセフ・ナイも指摘しています。

ソフト・パワーで、音楽や娯楽など文化的な価値観を「押し付け」るようにすることは、音楽や娯楽の本来の姿ではありません。(そういうのは流行りません)

ただ実際に、小泉政権(2001~2005)・安倍政権(2013~)の最大のブレーンである竹中平蔵氏もソフト・パワー経済として書いています。(↓)

ソフト・パワー経済―21世紀日本の見取り図:竹中平蔵

「米国留学制度」なんかはアメリカ側からのソフトパワー戦略として代表的なものです。
官僚や大手企業の人材にお金をあげて留学させて、その恩として日本国内で言うことを聞かせるわけです。

日本でそういうことをしているのがジョセフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、ジェラルド・カーティス、マイケル・グリーン、ケント・カルダー

この主要5人およびその取り巻きが、アメリカ国家戦略の日本支部の人々です。

本来は単なる助言係の知識人なのですが、日本の官僚・政治家・・内閣総理大臣・事務次官や局長までもが、あまりにこの人たちの言う通りに動きすぎてしまうため、
「実質の日本支配者」ということで「ジャパン・ハンドラーズ」と呼ばれています。↓

ジャパン・ハンドラーズ―日本を操るアメリカの政治家・官僚・知識人たち:中田 安彦 (著),

株や為替など投資をやる人なら分かると思いますが、わざわざ日本の政治家の発言を聞いてから動かなくても、先に命令を出している「ジャパン・ハンドラーズ」の言葉を聞いていれば、日本の政治家はジャパン・ハンドラーズの助言を復唱するだけなので「先が読めてしまう」ということです。

ちなみに安倍首相が読んでいたことで有名な本はこちらです。↓

世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち:副島隆彦

↓(続編)
アメリカ権力者図鑑―崩壊する世界覇権国の今を読み解く:副島 隆彦 (著), 中田 安彦

 

アニメ・マンガに関して、オタキングことFREEexの岡田斗司夫氏は、「階級文化」という言葉で語っていました。
身分の格差を「階級」といい、経済の格差は「階層」といいます。
現在の日本には経済的な格差の「階層」はあっても、身分の格差の「階級」は存在しません。
階級文化というのは、それぞれの階級に根差した文化で、ほかの階級には理解されない文化です。
しかしヨーロッパの「大衆文化」のように、全て「貴族文化が大量生産して安物化された」ならば、相対的に価値が下がり、経済的な「階層」は残っても、「階級」はなくなっていきます。(↓)
つまり、日本は階層社会にはなっても、階級社会にはならず、「文化」の中での新しい階級が生まれます。
「世界征服」は可能か? 岡田 斗司夫

これは社会学者のダニエル・ベルが「イデオロギーの終焉」や「脱工業社会」(↓)で書いたように、農耕・牧畜社会→工業社会→脱工業社会への移行の話に似ています。

農耕・牧畜から始まり、それが工業で機械化し、そして大衆化してくると価値が下がるので、工業のような「モノ」以外でまた新しい価値を見つけようとします。

モノで物質的な豊かさが飽和してくると、次に精神的な豊かさを求めるようになり情報・知識・サービスが重要視されるということです。

今実際に先進国はそうなっていますね。

つまりクールジャパンに代表されるようにアニメ・ゲーム・マンガなどの文化が重視されるようになるのです。

しかし「オタク」や「マニア」と呼ばれるように、そのソフトパワーの中にも全く違う形で「階級」があるのではないかということです。