※NSTとは、ノン・ストレス・テストの略。妊娠34週以降に行う。
ノン・ストレスというのは、ストレスがない、つまり子宮収縮のない(お産が始まっていない)状態のこと。この際に胎児の心拍数を調べる検査。胎児心拍数モニタリングともいう。

目的:胎児は子宮から出る際に心臓・心拍機能を駆使して全身に血液が送れるかどうか。その予備能力があるかどうかを事前に予測するため。(予備能力がなければ帝王切開などの対策が立てられる)

検査:方法として、腹部表面に子宮収縮と胎児心拍をキャッチする2つの器具を装着。胎動があったらボタンを押す。器具がずれると正しい結果が出ないので、できるだけ同じ姿勢を保つようにする。(所要時間:20~40分)
内容として、胎児well-being検査(胎児が良好な状態であることを確認する検査)の一つ。胎児の心拍数の推移を持続的に観察して変化のパターンを見る。
結果は、記録紙に出力、あるいは心拍波形のグラフを医師が診断。結果は正常とそれ以外(正常と断定できないが異常とは限らないグレーゾーンと異常パターン)がある。
正常以外の場合、必要に応じて他の検査を併用。入院検査となる場合もある。

実施時の看護:
①腹部に器具を装着
母体の腹部の張りをキャッチするセンサーと、胎児心拍数をキャッチするセンサーをつける。センサーは腹部に少し押し付けてベルトで固定。ゆるすぎるとキャッチできないので少しきつめに巻く。
上半身を少し起こした仰向けの姿勢で、脚は伸ばして下腹部を圧迫しないように注意(ファウラー位)。
②胎動を感じたらボタンを押す
胎動があったときの心拍数の変化を観察。胎動を感じたらボタンを押す(自動的に胎動をキャッチする機械では必要なし)
③所要時間は最短で約20分
胎児が起きていて胎動があるときは20分程度で終わる。リラックスを促す援助。

(備考補足1)
・「正常」の意味
胎児が元気なのは胎内環境(子宮内環境)が良いという意味。妊娠34週頃から胎内環境が急激に悪くなることはまれ。その後ほぼ1週間は正常である。

・「正常ではない」の意味は
胎内環境が悪化しているかもしれない、という意味。「胎児機能不全」。胎児仮死とは意味が異なり、「仮死状態」ではなく正常とは言い切れない=異常である可能性がある=悪いと決まったわけではない、こと
NSTの大きな特徴は「判定不明」あるいは、正常と断定できないが異常ともいえない「中間のグレーゾーン」が出やすいこと。判定不明には胎児が眠っていて胎動がほとんどないという場合もある。

検査不明の場合は、日を置いて再検査しますが、以下のような方法で追加検査をすることもある。
VAST:ブーブーという音(胎児振動音刺激試験)で、胎児を刺激して起こす。
CST:オキシトシンという薬を使って子宮収縮を起こして胎児心拍を観察する検査。
BPS:超音波検査で、胎児呼吸様運動(呼吸に似た肺の運動)、胎動、筋緊張、羊水量を観察する検査。

(備考補足2)
NSTのグラフの見方

横軸は時間を示し、胎児心拍数の変化が1分間ずつ継続して記録。
1分間は記録紙によって1cm幅、3cm幅などがあります)。縦軸は胎児心拍数(bpm)。
通常、ひと目盛りは30bpmで240bpmまで記録できる。グラフの上段に胎児心拍数、下段に子宮収縮が記録される。

妊娠中には子宮収縮はそれほどないが、妊娠後半期になると子宮収縮の頻度が多くなる(妊婦はおなかの張りとして感じる)。
胎児心拍数と子宮収縮の波形の間に胎動が記録される。

良好な状態のモニターパターン。
○正常脈:110~160bpm、○頻脈:161bpm以上、○徐脈:109bpm以下

■基線細変動(きせんさいへんどう)
状態の良いときの心拍数には細かい変化(ゆらぎ)。その心拍数変化(ゆらぎ)を「基線細変動」と言う。
胎児の場合、妊娠後半期には6~25bpm(bpmは1分間の心拍数)の変動があるのが正常。また胎児は20~40分ごとに寝たり起きたりしているので睡眠中は細変動が減る。
■一過性頻脈(いっかせいひんみゃく)
胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)に一時的に心拍数が多くなる。一過性頻脈が一定範囲で出るのが正常。妊娠中、20分間のNSTの間に心拍数15bpm以上15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態は良好と判断。
■一過性徐脈(いっかせいじょみゃく)
一時的に心拍数が減少すること。子宮収縮に伴って出ることが多い。臍帯が圧迫されたときにも出ることがある。胎児が自分の体で臍帯を子宮壁に押し付けたりしている場合も出る。普通は胎児の姿勢が変わるとすぐに治る。胎児が酸欠状態に陥る可能性もあり分娩監視装置を使って胎児心拍数モニタリングを行う。