●乳幼児の成長発達

成長(growth)とは、身長が伸びるというように「大きさが増すこと」を示す。
発達(development)は、内部に潜んでいたものが徐々に表面に広がってくるという意味。「構造(しくみ)の発達」というように測ることができない変化を示す言葉。

◯乳児
乳児期は生後1年未満の身体的・知的機能の発達が著しい時期

◯幼児
幼児期は生後1年以降から就学前まで社会生活を送る上での基本的能力を獲得する時期。

●乳幼児の特徴

◯乳児
乳児期は新生児の生理的体重減少から回復したあと身体的発育をする
出生体重中央値は男児300kg、女児2.94kgに対し、
生後3~4ヶ月ではその2倍、1年で約3倍になる

乳児の身長は出生時は男児49.0cm、女児48.5cmと比較して
出生後1年では男児74.8cm、女児73.4cmと出生時の約1.5倍

頭囲・大泉門は、出生時は男児46.2cm、女児45.1cm。
出生後1年で46.2cm、女児45.1cm
大泉門ははじめ数ヶ月は増大するがその後に縮小していく
大泉門の膨隆は髄膜炎や脳炎、脳腫瘍などの脳圧亢進の症状
大泉門の陥没は脱水症状

視覚では対光反射(瞳孔の縮瞳)、閉眼反射(目を閉じる)
1ヶ月ごろの乳児は、注視や追視を行う
その他、聴覚・味覚・嗅覚・皮膚感覚触覚も発達する。

2歳ごろまでは感覚運動期と呼ばれている

新生児は仰臥位だと頭は左右どちらか、
生後1ヶ月ごろの乳児は短時間であれば頭を正中に保つ、
2ヶ月の終わりごろには仰臥位で頭の向きをコントロールして腹臥位では頭部を少し上げる、
4ヶ月では腹臥位にすると上肢で支えて頭と肩を上げて胸部を床から離していられる(首のすわり)
寝返り、おすわり、一人歩きなども9,10割の乳児が達成する

コミュニケーション機能として、
生後2,3ヶ月ごろの乳児は「アー」「ウー」などの母音中心の発生の喃語
1歳前後に初めて「マンマ」「ワンワン」という意味ある言葉(初語)が出現

側を離れると不安になって泣いたり探し求めたりする「分離不安」、見知らぬ人に顔をこわばらせて無く「人見知り」が起こる

◯幼児

体重は2歳半頃に出生時の約4倍
4歳頃には出生時の約5倍
身長は3歳半~4歳頃に出生時の約2倍

身長に対する頭頂の割合は、新生児が約1/4に対して、2歳児では1/5
大専門は1歳半頃までに閉鎖
閉鎖が早すぎる場合は小頭症、遅すぎる場合は水頭症や骨の発育不良の可能性がある

乳児期と同じく感覚運動期
2~7歳頃の幼児は全操作的段階(石を自動車に見立てて遊ぶ)
4~5歳までは自己中心性と呼ばれ、自分の見えているものと全く同じものが相手にも見えていると思い込んで違いがわからない
身の回りの無機物に感情があるとするアニミズム

3歳児が注意を継続できるのは10~15分
5歳ごろには30分

1歳~1歳半は「マンマ」「ワンワン」の単語表現
1歳半から2歳の間に「アッチ、イク」「カミ、チョーダイ」などの2語文を話す
2歳移行の幼児は「これなぁに」「どうして」など質問を繰り返す
3~4歳頃の幼児は助詞や助動詞を使って複雑に話す
4歳ごろまでに話し言葉として完成する

2~3歳ごろまで愛着行動がみられる
3歳をすぎる頃には母親と自己が別の存在と受け入れて内面に母親イメージを確立

2歳ごろには男女を衣類などの外見から区別するようになり、3歳ごろまでに性別を知る

遊びも知的機能や運動機能から整理されていく
・感覚遊び・・感覚を働かせるのが、楽しみを起こすような遊びである。2 歳くらいまでその後ほかの遊び方が増えてくる。がらがらを聞いて喜ぶ、音を聞いてはじめは喜んでいたが、後に自分で動かす。

・運動遊び・・手足や身体の運動が楽しみをもたらすような遊びである。早くから、長く続けられる。年齢とともに遊びの内容が変化する。手足を引っ張ったり、物をつかんで投げる、三輪車に乗れるなど。

・模倣遊び・・子供の周囲にある生活を真似ることによって楽しむ。ごっこ遊び、模倣遊びは、2歳ころから 3,4歳が盛んで、5歳近くまで続ける。このころには、想像力が盛んになり模倣の欲求が強くなる。

・受容遊び・・絵本を見たりお話を聞いたり、テレビを見たりという種類。 受身になって受け取る遊び。1歳ころから現れ3歳で盛んになりそれ以降、本当の意味で楽しむことが出来る。

・構成遊び・・いろいろなものを組み立てたり、作り出したりするところに楽しみを感じる。積み木、絵をかく、ねんど細工、折り紙など。
1歳ころから始まり、学童期になっても盛んに行われる。 社会性立場からの分類 とりとめのない動作。
2歳以降の児に多く取り立てて何もせず、その時々に興味の持つものを眺めたりする。人の後をただついていくといった動作。

・一人遊び・・周囲に子供がいても無関心である。 2,3歳児に多い。

・傍観遊び・・ほかの子供に関心を持ち始め、時に言葉かけをするが、遊びに積極的にかかわらない 。2,3歳児に多い。

・平行遊び・・ほかの子供の遊びを見ていて自然に引き込まれ自分もそれをやり始める。同じようにしているが、一緒に遊んでいない・お互いに関係なく遊ぶ。

・連合遊び・・ほかの子供と一緒に遊ぶ。役割分担は、はっきりしていない。

・協同、組織的遊び・・ゲームを作ったり、何かを作ったり、共通の目的を持つ遊び。役割分担を作ったりルールを持って遊ぶ。 3 歳を過ぎると急に増える。

【乳幼児の特徴(身長・体重・言語機能・運動機能)の評価数値】

●身長
◯身長増加の目安
出生時:50cm
1歳:75cm
3歳:95cm
4歳:100cm

◯頭長/身長比
新生児:4頭身
6歳:6頭身
思春期にはわずかに下肢よりも体幹の伸びの方が上回る

●体重
体重は身長と異なり減少もする
体重は体積(3乗)に依存するため身長よりも変化幅が大きい

◯体重増加の目安
新生児期
生理的体重減少:出生後10%以内の体重減少、7~10日で出生体重に復帰
乳児期:1歳で3倍
0~3か月:25~30g/日
3~6か月:20~25g/日
6~9か月:15~20g/日
9~12か月:10~15g/日
2歳で4倍
4歳で5倍

●言語機能、運動機能

1ヶ月・・物を見つめる 元気な声で泣く、大きな声に反応
2ヶ月・・手を口にもっていってしゃぶる、凝視、追視、あやすと微笑、音に関心を示す
3ヶ月・・ガラガラをつかむ 布をかけられると不快を示す、あやすと声を立てて笑う、人の声で静まる
4ヶ月・・定頸。ガラガラを振って遊ぶ、声を出して笑う
5ヶ月・・鏡に映った自分の顔に反応
6ヶ月・・寝返り 手を伸ばして物をつかむ、声をかけると振り向く
7ヶ月・・1人座り、おもちゃ・立方体の持ち替え。コップから飲む。親の話し方で感情を聞き分ける
8ヶ月・・おもちゃを取られると不快を示す
9ヶ月・・つかまり立ち 鋏状把握、人見知り    
10ヶ月・・バイバイなどの動作 
11ヶ月・・つたい歩き。コップを自分で持って飲む      
1歳・・1人立ち ピンセットつかみ、父母の後追い 言葉を1・2語正しくまねる  
1歳2ヶ月・・歩行 2語言える  
1歳4ヶ月・・積み木を2個重ねる 3語言える 簡単な命令を実行
1歳6ヶ月・・走る なぐり書きをする 上着を脱ぐ、絵本を読んでもらいたがる
1歳9ヶ月・・1人で1段ずつ階段を昇り降り、目・口・耳などを指示する
2歳・・大きなボールを蹴る 排尿を予告する、親から離れて遊ぶ 2語文が言える  
2歳3ヶ月・・1人でパンツを脱ぐ、電話ごっこ    
2歳6ヶ月・・まねて直線を書く        
2歳9ヶ月・・まねて○を書、年下の子の世話をやきたがる    
3歳 片足立ち、三輪車 靴をはける、スプーンを上手に使う 年齢・姓名が言える  
4歳・・片足跳び □を描ける 排便が自立 お使いができる    
5歳・・スキップ、ブランコの立ちこぎ △を描ける 1人で着衣が可能   簡単な物語が言える

●その他(備考)

●頭囲
正常
新生児:33cm
1オ:45cm
3才:50cm
○頭囲の増大
水頭症:縫合離開、落葉現象
頭蓋内圧亢進:ビタミンA中毒
硬膜下液の貯留
先天代謝異常:テイ-サックス病、ハーラー症候群

●体表面積
新生児は体重あたりの体表面積が成人の3倍であり、よって熱喪失が激しい
 
体表面積と薬用量比
新生児:0.2m2(成人の1/8)
6か月:成人の1/5
1歳:成人の1/4
3歳:成人の1/3
7歳:成人の1/2
10歳:成人の2/3
12歳:成人の4/5
(成人:1.7mとした場合)

○バイタルサインの年齢的変化  
    体温(℃)  脈拍数(/分) 呼吸数(/分) 血圧 (mmHg)
新生児  36.5~37.0   130~145   40~50 80~60 60
乳児   36.5~37.0   110~130 30~40 90~80 60
幼児   36.8 90~110 20~30 100~90 60~65
学童   36.8 80~90 18~20 120~100 60~70
成人   36.0~36.5 60~80 16~18 130~110 60~80

●乳幼児の生活

◯乳児
・排泄
生後5ヶ月までは排便の頻度も規則的ではない。排便回数も多い。
・衣類
衣類を汚す機会が多い
・睡眠
新生児はほとんど眠っているが、生後6週ごろから睡眠時間がまとまる
生後6ヶ月ごろまでに覚醒から睡眠への移行時間も定着する
レム睡眠の割合が減少していく
・環境
冬は20℃前後、夏は26~28℃
湿度は50~60%

◯幼児
・集団と性差
1歳半で仲間に関心をもち、3歳頃から仲間との交流、4歳頃から特定の子どもとの交流
2歳ごろは男女の形態的区別は衣類などの外見で区別し、3歳ごろには性別を知る
・遊びと社会性

●乳幼児の養護方法

◯乳児
・排泄
トイレトレーニングとして排泄に対する子どもの感受性を高めること
清潔に保ち、爽快感を「チイでたね。すっきりしたね。」と言葉で表現する
・食事
食物アレルギーに注意する。卵・牛乳・大豆などのタンパク質が多い
発疹や蕁麻疹などの皮膚症状、喘鳴や咳嗽などの呼吸器症状でアナフィラキシーになる
・衣類
汚してもいい衣類にすること
・睡眠
夜泣きには空腹や暑さや寒さやおむつ、衣服の締め付けなどの原因を除去する
・遊び
見る・聞く・握るが中心になるのでエ天井からつるしたモビールやガラガラ、おきあがりこぶし、清潔な玩具
・事故
吐乳や硬化やボタンなどの異物誤嚥、寝返りの際の口や鼻をふさぐような柔らかい寝具
授乳後は乳児の排気の後、顔を横向きに寝かせる
乳幼児突然死症候群というのもあるが原因は不明である

◯幼児
・排泄
排尿は1歳すぎる頃には膀胱に尿が溜まった感覚が分かる
2歳過ぎ、3歳半ばでほぼ完全に自立する
排便は2歳半ごろにはトイレ誘導すると一人で排便できることもある
一人で便意を感じて排便できるのは4歳、紙を使って後始末までできるのは4歳半ごろ
・睡眠
1~2歳は昼寝が1回、3~4歳ごろには昼寝をしなくなる
睡眠時間も年齢が進むにつれて減少する
多相性睡眠型(何度も眠る)から単層型睡眠型(まとまって眠る)になる
・衣類
1歳すぎる頃から着脱に興味をもって服を脱ごうとする、2歳は特に上着をに脱ごうとする
2歳半~3歳ごろは左右を間違いなく靴をはく
4歳ごろに上着の前ボタンをつけられる
一人できられるのは5~6歳頃
・清潔
歯磨き・うがい・洗顔が一人できられるのは4歳頃

●養育者の役割

・排泄の世話
幼児期にはトイレトレーニングが必要である。爽快感を「チイでたね。すっきりしたね。」と言葉で表現する。
夜尿は夜型の睡眠パターンが定着すれば睡眠中に抗利尿ホルモンが分泌されるので夜尿も減少する
2歳前後に退行現象で排尿してオムツに戻ることがある。トイレトレーニングは無理に勧めずに情緒の安定をはかる。

・食事の世話
バランスの良い3回の食事だけでなく、間食で不足する栄養や水分を補う

・睡眠の世話
家族の睡眠時間が児の睡眠時間に影響するので、家族が生活時間を気を付ける
3歳以降は寝付くまでに時間がかかったり、不機嫌になることがある
寝る時のタオルを持ったり指しゃぶりをするが、これをやめさせると行動が強化してしまう

・衣類の世話
吸湿性の高い素材を選んで汚れてもいい衣類を選ぶ

・清潔の世話
洗顔や手洗いうがい、歯磨きで齲歯の予防を擦る

・事故防止
不慮の事故や溺死が多いので注意する、また交通事故も多い

・予防接種
①・・1回目 ②・・2回目 ③・・3回目

●2ヶ月●
インフルエンザ菌b型(ヒブ)①
肺炎球菌①
B型肝炎①
ロタウイルス①

●3ヶ月●
ヒブ②
肺炎球菌②
4種混合DPT-IPV(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)①
B型肝炎②
ロタウイルス②

●4ヶ月●
ヒブ③
肺炎球菌③
4種混合DPT-IPV②
(ロタウイルス③)

●5ヶ月●
4種混合DPT-IPV③
BCG

●6ヶ月以降●
インフルエンザ(毎年)

●8ヶ月●
B型肝炎③

●1歳~1歳3ヶ月●
MR(麻疹・風疹混合)①
水痘①
ヒブ④
肺炎球菌④
流行性耳下腺炎①

●1歳5ヶ月頃●
4種混合DPT-IPV④

●1歳半~2歳●
水痘②

●3歳●
日本脳炎①②

●4歳●
日本脳炎③

●5~6歳●
MR(麻疹・風疹混合)②
流行性耳下腺炎②

●9歳●
日本脳炎④

●11歳~12歳●
2種混合DT(ジフテリア、破傷風)①
ヒトパピローマウイルス①②③